2025年2月18日火曜日

二宮敦人「最後の秘境 東京藝大」(2016)

二宮敦人「最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―」(2016)を2019年新潮文庫版で読む。
これ、友人と出かけた先にあったBOで有人が購入した何冊かのうちの一冊。まだ一冊も読んだことのない作家だが借りて読む。

この作家はふだんはホラー小説やエンタメ小説を書いてる作家らしい。冒頭で自己紹介してる。そしてなんと妻は現役の東京藝大(彫刻科)の学生だという。そんなわけで妻の通う東京藝大の学生たちを取材したドキュメンタリー。

この本を手に取った理由は、乃木坂46の池田瑛紗が2浪の末に合格した大学がどのような場所か知るため。
自分、芸大受験する生徒って、ほんとうに才能のあるごく一部の人だという認識は持っていた。
東京藝大は3浪が普通で、それ以上の人もたくさんいる。他私大で仮面浪人をした後に合格入学してくる学生もいるらしい。私大より学費が安いので、それでも転学したほうが安く上がるらしい。

東京藝大は絵画彫刻工芸の美校と、音楽の音校とある。この二つの学生は相互に接することがほとんどないらしい。
で、この両行の学生の見た目には大きな差があるらしい。音校の学生が清潔でおしゃれなのに対し、美校は身なりに気を遣わない学生が多いらしい。

音楽専攻の学生は常日頃、顔を繋いで売り込むために各所パーティーなどに参加したり、ステージ用のドレスを何着か持っていて、ヒールを履いているらしい。入学して最初にすることが宣材ポートレートの撮影?!それが芸の道か。

そんな東京藝大の現役学生やOBたちにインタビュー。座談会形式?読んでいて海外のドキュメンタリー番組のようだと感じた。
ありとあらゆる学部学科専攻の学生に話を聴く。あなたはどうしてこの大学を?受験はどのような出題が?先生は?あなたが天才だと思う学生は?などの質問と回答。

ピアノ科やヴァイオリン科はとくに過酷。小学生から始めたのでは遅いという。
両親の夢をかなえるために受験する生徒たちが憐れ。
ピアノ科は同期が24人、4学年で100人。その中から1番2番という生徒が出てくる。恐ろしい虎の穴。

東京藝大卒で就職する人は1割にも満たない。ほとんどが大学院進学か留学、そして進路不明。おそらくフリーター。苦労して入ったのに。
この本でインタビューを受けている学生たちはその後、有名になったのか?そこは調べてないのでよくわからない。器楽科の人々は卒業後も腕を磨いてオーケストラに欠員が出たらオーディションを受けるらしい。ファゴットとか1名募集に50人とか受けるらしい。それはすごいプレッシャー。

この本に登場する学生の中に、見覚えのある名前がある。声楽科3年の井口理さんって…、もしかしてKing Gnuの井口理?!
東京藝大でいちばんチャラいのが声楽科…という話題に登場。
声楽科男子学生は入学直後から伴奏でペアを組むピアノ科女子にカワイイ子がいないか目を付ける」「声楽科は対人能力が高い人が多い」「声楽科がいちばん恋愛のごたごたが多い」など証言。

そして「僕はクラシックやミュージカルではなく、ポップス志向なんですよね。ゆくゆくはそっちで活動したいな、なんて思ってます。CD作ったりしてますが、まあ徐々に、ですね」
はぁー、貴重なインタビューだ。東京藝大でいちばん将来が厳しいと言われるのが声楽科。井口理は学生時代からバンド音楽をやっていたのか。

入試問題(実技課題)が独特だと感じた。センター試験などの学科はほぼ考慮されず、実技試験に高いウェイト。すでに高い技能があるのは当たり前で、試験官が粗を探す。何か光る才能があればと目を光らす。そんなの自分は耐えられない。

あと、絵画彫刻、音楽は国立の芸術大学があってもいいと思うのだが、伝統工芸とか邦楽とかに大学教育って必要かな?って思った。大学で学んでも結局は師匠と弟子のような現場で技を身に着けるしかない。

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