梓林太郎「納沙布岬殺人事件」(2000 祥伝社 NON・NOVEL)を読む。
これで無償でもらい受けてきた梓林太郎の3冊をすべて読んだ。
東京渋谷に事務所を構える旅行ライター茶屋次郎。今日も働かない事務員女子に心で毒づきながら次の企画を編集長牧村と話し合う。次は納沙布岬とかどうだろう?
で、東京有明-釧路航路フェリー「サブリナ」に2泊の単身乗船。
デッキでサングラスをした27、28歳ぐらいの美女・四季乃と出会う。なんと次郎の書いた記事の読者だった。
その後、レンタカーで納沙布岬まで一緒に行動。しかし、次郎の行く手に地元警察が待ち構える。なんとサブリナ船内の乗用車トランクから男性の遺体が発見。館内をウロウロしていた茶屋次郎が疑われる。
警察に「ちょっと署まで」と言われる。これ、たまたま知り合って同行してた女性にも迷惑。
次郎の説明を信じない。イチイチ嫌味のする物言い。こちらの説明には耳を貸さないのに、自身の荒唐無稽な揣摩臆測を牽強付会。ダメだこりゃ。
内田康夫の浅見光彦も取材先で殺人事件に巻き込まれ取り調べを受ける。内田せんせいも梓せんせいも、この世代は警察の横暴さと失礼さにほとほと嫌気がさしていたものと推測。警察は徹底して無能として描かれる。
このままでは重要容疑者にされる。こうなったら先に犯人を見つけよう!被害者男性の足跡を追って根室、別海町で聴きこみ。四季乃も同行し協力。
行く先々で警察。さらに疑惑を掛けられるw 女連れで警察の捜査に介入するな!地元刑事たちがみんな厭らしい。
細い糸をたどるような聴きこみ。被害者男性の家族について、地元民がみんな口ごもる。これは一体背後に何が?
別海町・母親の不幸な生い立ち、戦争から復員した祖父の悲劇、田舎の有力者の家同士の確執、なんだかすごく横溝正史の雰囲気がしてきた。田舎って怖い。
尾岱沼で四季乃が拉致される。海辺の小屋のような場所に監禁されていたという。身近にいてくれた四季乃に乱暴に脅しをかけてくるとは…、犯人を許せない!
とても平易で読みやすい旅情ジャーナリズム追跡劇。これまで読んだ梓林太郎3作品でこれがいちばんハラハラしたしサスペンスだったし面白かった。リアルを感じた。
暑かったので風呂場に持ち込み、水風呂に浸かりながら2時間ほどで読み終わった。
祥伝社ノン・ノベルのこのシリーズって、その土地の写真も掲載されていてイメージしやすい。だが、ヘタウマ挿絵は要らないと思った。
調べてみたら、サブリナは1999年の釧路航路廃止後に韓国へ売却。仁川-威海港フェリーとして黄海を2018年まで横断運行。さらにスペインに売却されモトリル-メリリャも地中海航路で運航。2020年にはさらにギリシャに売却。イグメニツァ・ケルキア島とイタリア・ブリンディシ港のアドリア海で航行中。
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