井上真偽「恋と禁忌の述語論理(プレディケット)」(2015 講談社NOVELS)という本があるので読む。第51回(2015年度)メフィスト賞受賞作だとオビに書いてある。初めて読む作家。東大卒らしい。
主人公の森帖詠彦くんは大学2年生(理系)。
そしてもう一人の主人公がアラサー叔母・硯さん。高偏差値高からT大。フランスの大学の研究機関を経てフランスの金融機関で就職し、平均的サラリーマンの生涯年収の数倍を稼いだ後に退社し帰国。悠々自適のセミリタイア生活をしているというスーパー才女。数理論理学(記号論理学)の権威。
詠彦くんが関わったか聴いて来た、すでに解決している3つの事件を硯さんに説明して聴かせる。
スターアニスを使ったカレー料理に「しきみ」が誤って混入してしまった食中毒死亡事故が、故意か過失か?単なる不幸な事故なのか?
これは詠彦くんと友人で、被害者と友人だったという少女の姉・ゆり(花屋)が、天才的名探偵ぶりを発揮して解答を出していた。
しかし、硯さんが数理論理学によって、ゆりの論理の甘さを指摘。まったく違った結論を出す。
いくつかのポイントを命題として定義したら、あとは演算規則によって導かれた結論のみが真相。犯行の動機などは一切考慮しないというドライぶり。
この第1エピソードを読んだだけで「ひょえ~」とたまげてしまい、呆然とした。
続いて、イタリア料理店のスタッフがトイレで絞殺死体となって発見された事件。これもすでに詠彦くんの先輩(MBAを取得し4か国語を話す天才)が解決。
これも硯さんに話して聴かせると、やっぱり名探偵が陥った論理の罠を指摘する。数理論理学によって導き出された結論こそが真相。
さらに、雪の洋館で若い女当主が絞殺された事件。犯人は幼い双子姉妹?一方は眼帯をし右手はギプスで吊ってある。もう一方は脚が不自由。これも居合わせた名探偵が、雪の足跡などの問題から真犯人を名指し。
これも硯さんは瞬時に論理的に真相を教えてくれる。
だが、この3つのエピソードに共通する何かを硯さんは見抜く。そしてラストで明かされる驚愕の真相!!
いや、びっくりした。これは衝撃的だし画期的。推理小説で論理記号の演算とか、頭がクラクラする。ホームズやクリスティや乱歩や横溝の時代にはたぶんまったく存在しなかったタイプの推理小説。
この世界を支配する階級は、この論理で瞬時に真偽を判断しているの?
もしかして、検察官とか弁護士とか、政治家とかはこういった論理を使いこなせている存在なの?
硯さんが詠彦くんに解説トレーニングしてくれているのだが、読者にとってはまだ不十分。たぶん自分はまだなんとなくわかったような気になってるだけ。これは数理論理学とやらを学ばないといけない。今後、この論理学とやらを学んでいかないといけない。
たぶんこの作家はとてつもなく頭がいい。文章の細部にまでそれを感じる。是非ともニュース解説番組とかにコメンテーターとして登壇し、政治家たちの発言の嘘を証明してほしい。
硯さんと詠彦くんのキャラも良い。ふたりの会話のユーモアも良い。結果、面白かった。
この本はいつも手許に置いて読み返したい。強くオススメする。
ドラマ化するときは、硯さんを齋藤〇鳥さんでお願いしたい。
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