2024年8月29日木曜日

藤吉夏鈴「新米記者トロッ子」(2024)

櫻坂46・藤吉夏鈴の主演映画「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」を某西多摩地方のイオンシネマで、友人と合流し平日最終で見てきた。客は我々2名のみだったので、雑談しながらツッコミながら見てきた。

監督は小林啓一で脚本は大野大輔。とくに原作はなく原案は宮川彰太郎とクレジットされている。製作と配給は東映ビデオ、SPOTTED PRODUCTIONS。主題歌はクレナズム「リベリオン」

高校新聞部を扱った青春ムービーのようだが、予告編動画を見ると、ちょっと暑苦しいような気がした。
だが、小林啓一監督の過去作「恋は光」(2022)、「殺さない彼と死なない彼女」(2019)、逆光の頃(2017)が良かったので劇場へ見に行くことにした。
でもやっぱり正直言って藤吉夏鈴が目当て。でもまさかいきなり藤吉で主演映画が作られるとは、数年前は思ってもいなかった。女優藤吉を応援するために見に行った。
自分は欅坂時代から藤吉には強く注目していた。平手不在の欅坂の次世代を担う存在だと見抜いていた。だが、個性的ではあっても美人とは言えない藤吉がまさか主演女優とは驚き。

藤吉夏鈴演じるヒロイン所(トロッコ)は櫻葉学園高校1年生。憧れの高校生作家・緑町このはが在籍する文芸部に入部するために入部テストを受けている。え、文芸部に入るだけなのに選抜されるの?
試験を受けている最中に窓から侵入してきたドローンが直撃し気を失う。不幸な事故とは言え、再試験を行う予定はないと入部を断られる。(なんか、脚本としても演出としてもこのシーンは違和感)
そこに文芸部部長の西園寺茉莉(久間田琳加)がやってくる。この子が全国高校生文学コンクールで最優秀賞を受賞している文芸部のカリスマで学園のドン。その背後には学園理事長。
(西園寺まりって名前に聞き覚えがあった。この映画の製作スタッフは「究極超人あ~る」を読んでいたに違いない。西園寺まりいがモデルかもしれない。)

実は文芸部に在籍していない正体不明の「緑町このは」を探るべく、トロッコは文芸部部長から、過去にこのはと接触しインタビュー記事を掲載した非合法新聞部に潜入し、その正体を探ってくるというミッションを与えられる。茶室で茶をふるまわれながら。
成功すれば入部を許すという密約。文芸部の万年筆を与えられる。「お姉さま…」
所在不明の新聞部までたどり着く経緯が面白い。いかにも潜入スパイ。「亀は意外と速く泳ぐ」という映画を想い出した。スパイも記者も地べたをはいつくばってネタを拾う嗅覚が必要というわけか。

そして町工場印刷所にある部員2名の部室へたどり着く。「合格!」トロッコは即入部を許可される。
新聞部部長・杉原(髙石あかり)が強烈なキャラクターを持っている。ジャーナリズムの闘士。ほぼこの映画の主役。

この杉原がトロッコに新聞記者の基礎を厳しく叩きこむ。え、高校生なのに?
そしてトロッコは潜入スパイだったはずが、逆スパイへと変貌していく。
なんだか、共産党非合法時代の特高刑事みたいだった。
高校生たちの学園にいったいどんなジャーナリズムがあるというのか?教師たちのセクハラスキャンダルなどを暴く。なので学園当局からも教員たちからも毛嫌いされる。退学をほのめかす。

こういった学園ものでは生徒会が当局で悪の組織となるのだが、この映画では文芸部(特別進学クラスのみ入部可)と理事長が権力を持つ悪。盗聴を仕掛けたり、新聞部員の恩田(中井友望)を引き抜き、新聞部の分断を図る。

そして、文芸部部長のコンクール受賞作の盗作疑惑と不正を暴くスクープへ。

高嶋政宏演じる沼原理事長のキャラ造形がコミカルすぎてリアリティなかった。学園の闇がマンガすぎた。
ほぼ裏金自民党をわかりやすく描く。でも、あんな大ぴらに札束でコンクール審査員を買収とかするのか?パリオリンピック審判団も裏側はこんなだったかもしれない。
この映画で藤吉夏鈴を知った人は、あまり演技力を感じなかったかもしれない。表情の質感が森山未來に似ている。それほど表情にバリエーションがない。なんだか暗くてぼんやりしている。
しかし、すらっと背が高く、ひらひら漂うような華奢な制服姿と立ち姿が美しい。
あと、ヒロインが何かを決意するシーンは必ず湯船に浸かっている…というのが日本の青春映画のお約束。この映画でも踏襲。

久間田琳加は貫禄のある文芸部部長という役だったからか、ちょっと太って見えた。
藤吉の「お姉さま」呼びには萌えた。

この映画で一番輝いていた存在はほぼ主役の髙石あかりだった。助演女優賞ものだった。だが、どうしてここまで地下活動で闘志を燃やす?そこはあまり描かれない。

この映画は髙石と高嶋政宏で持っていた。高嶋は学園の理事長役のスペシャリストになりつつある。高嶋の存在と、クライマックスのトロッコ登壇マイクパフォーマンスは「映像研には手を出すな!」をも想わせた。

新聞部の活動をテロと認定し、取り押さえようと必死の教師たち。ほぼ自公政権に及び腰で矜持を失った大手マスコミを見るようだった。
正直、この映画のストーリーと脚本は自分が期待していたクオリティになかった。いかにも中高生向け夏休み映画といった雰囲気。
この理事長の不正を暴くクライマックスシーンがあんまり上手くいっていないように感じた。アイデア不足で練り込み不足。
大人が見るにはきついかもしれない。内容が10代向けコミックのよう。

あの「数年後…」を示すラストも自分は好きじゃない。いかにも子ども向けドラマな展開。
自分なら、大人たちのほうが一枚上手でヒロインたちは挫折させられ、新聞記者となった後の次のステージではどす黒い政権へと立ち向かっていく…という映像を見せて、余韻を持たせて物語を終えたい。
藤吉夏鈴は「そこ曲がったら、櫻坂?」でも面白い。ぼんやりリアクションが面白い。ついツッコミ入れたくなる存在。
この映画を企画し製作した監督とスタッフに感謝しかない。また次の藤吉夏鈴主演映画を期待して待っている。

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