梓林太郎の長編旅情推理、旅行作家・茶屋次郎の事件簿「立山アルペンルート 黒部川殺人事件」(2007)を読む。祥伝社ノン・ノベル書き下ろし。
梓林太郎(1933-2024)は長野県下伊那郡上郷村出身。貿易会社、コンサル業、調査会社を経て1980年に推理作家デビューした山岳ミステリーの第一人者。
自分、今年になるまでこの作家のことは何も眼中になかった。今作が人世で2冊目の梓林太郎。
こいつも前回読んだ「北岳 殺意の岩壁」といっしょに無償でいただいてきた古いノベルス本。
オビを見るとテレ東で橋爪功主演でドラマ化されているようだ。
この主人公が原作だとおよそ40代ぐらいでハンサムらしい。渋谷に事務所を構える人気の旅行作家という設定。
若い女性事務員を2名抱えている。この事務員女がひとりは秘書、もうひとりがいてもいなくても影響のないお茶くみ事務。この二人と、出版社の編集長とのやりとりがユーモア要素。けっこう口が悪くてケンカ腰。しかし取材先では紳士。
富山・宇奈月温泉在住の読者からの手紙で取材に行くと、連絡がつかなくなる。この須笑子という30代女性の恋人が黒部峡谷で行方不明になり捜索に加わっている。そして遺体発見。谷底の絶壁で宙づりになっていた。被害者男性には登山の経験はない。
須笑子の家の向かいに住む19歳娘とちょいお色気シーン。その父親とも協力して各地に聞き込み捜査。
この茶屋次郎という作家が聴きこみ先でも名前を知られている有名作家。ほぼアナザー浅見光彦。無能警察とは別の独自捜査で真相に辿り着く。
須笑子は東京で介護福祉の仕事をしていたのだが急に辞めて富山に戻っていた。一体なぜ?なにか恐ろしい通り魔事件に巻き込まれていた。
須笑子も被害者だったのに、事件で死んだ若い女性の家族が逆恨み?!
この逆恨み動機がまったく理解不能なぐらい酷い逆恨み。読者の誰も共感できない狂った動機。無関係な人間を殺すのでなく、まず通り魔犯人を先に始末しろよ。
須笑子の過去の恋人も含めて2名を殺害している。強い殺意を持って計画的に、凶悪だし残忍。これは警察に出頭したところで死刑が求刑されるだろうな。
酷い動機で関係ない人物が殺されている酷い事件なので、読んでいて怖いサスペンス。まるで「呪怨」シリーズ。強引で急な幕引きの松本清張型社会派ドラマ。
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