2024年8月6日火曜日

樋口有介「プラスチック・ラブ」(1997)

樋口有介「プラスチック・ラブ」(1997)を読む。2009年創元推理文庫版で読む。
もうこの作家の本はどれを読んでも同じでそこそこ感がするので卒業かと思ってたのだが、未読の文庫本がそこに110円で売られていたので買わないわけにはいかなかったw

この連作短編集はまず第4話「ヴォーカル」が小説現代1989年3月号に掲載されたのに始まり、柚木草平シリーズと並行して週刊小説に次々と発表。1997年に登場人物名を変えたりして一冊の単行本にまとめて実業之日本社から刊行。

8本を収録しているのだが、どれも断章のような高校生男女の会話が中心。
木村時郎くん(高2)が何度も登場するので、この子が主役。
樋口有介の本はどれも主人公がスカしてるけど、この本も高校2年生とは思えないスカしかた。ほぼ村上春樹の登場人物。会話がとても高校生のものと思えない。中身は人生に疲れた40代。

読んでいてこれはいけないと思ったw 何もサスペンスがない。ほぼ文芸書。
だがしかし、第6話「団子坂」、第7話「プラスチック・ラブ」は中学の同級生女子の死の真相を探し歩く内容なので青春ミステリー&サスペンスといえるかもしれない。
しかしそれでも意外な真相などは用意されていない。

「プラスチック・ラブ」には38歳探偵柚木草平が、中学時代の同級生がラブホテルで絞殺された件で木村くんに接触してくる。ふたりの会話がハードボイルド。
「俺は三十八年も生きてるけど、気の弱い女になんか、一度も会っていない。」

巻末の作者あとがきで樋口有介が「短編は苦手」と語っている。それは読者もそうだろうなと感じる。正直、どう読んでいいのかわからず困惑した。これを青春ミステリーかと思って手に取った読者は「思ってたのと違う」と感じたに違いない。

高校生、大学生もこの本では読後の満足感は少なかっただろうと思う。よほど樋口有介の文体と登場人物たちの会話センスが好きな人にしかオススメできない。それより、樋口有介が今後10年後、20年後も読まれているか心配。

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