2024年8月21日水曜日

岡嶋二人「コンピュータの熱い罠」(1986)

岡嶋二人「コンピュータの熱い罠」を読む。BOで110円で手に入れた
この作品は1986年に光文社から刊行後、90年に光文社文庫化。そして2001年に講談社文庫化。今回自分が読んだものは講談社文庫初版。

結婚紹介サービスのデータセンターでオペレーターとして働く夏村絵里子は27歳のITエンジニア。(もう80年代中ごろには個人情報は厳格に扱うものだという概念があったのか。)

で、顧客の情報を見せろ!とやってきた中年女性に対応。丁重に断るのだが、この女性の兄51歳はここで紹介され結婚した女性27歳に殺されたと主張。新婚1か月でフィリピンで水難事故死したことにされているが、女に殺された!

さらに、倉庫会社勤務の恋人が独身男性データとして登録されていることを知る。男性に問い詰めると、会社の独身男性はみんなオトリデータとして情報を提供してるんだから気にするなと言われる。
しかし、このデータが内容スカスカなはずなのだが、いつの間にか個人情報がみっちり書き加えられている。それは不審。同僚の古川と一緒に調査。

この古川が何やら大きな事件が起こってる兆候をつかんだらしい。するとあっという間に殺害。さらに自宅アパートを荒らされる。何か重要な証拠を持ち去られた?
途中からまるで宮部みゆき「火車」のような、恐るべき犯罪とその中心にいる女の正体に気づき始める。8人の男性が結婚1か月で死んでいる…。

岡嶋二人作品のヒロインはみんなどこか天然で呑気。このヒロインも自らずんずん調査していって自身の危機一髪。いやもう恐ろしい。これはずんずんページがめくれるサスペンス娯楽作!

ヒロインの敵と想われていた同じ会社のプログラマーが、「エルピス」の岡部たかしのような質感だった。登場したときは最悪に嫌なやつだったのに…。
あと、警察がおそるべき無能。こんな凶悪な犯罪に気づいてさえいないとか。

「クラインの壺」が面白かった!という若い読者には、「99%の誘拐」か、この「コンピュータの熱い罠」をオススメしたい。話のテンポが良いし、文体も読みやすいし、無駄に感じる冗長なやりとりとかも一切ない。

ボリューム感サイズ感もちょうどいい。岡嶋二人作品の中でもかなり面白いサスペンス小説。
1986年というとレトロな作品のはずだが、古いのに古くない。なんで未だに映画化もドラマ化もされてないんだ?
PS. 読み終わってすぐに光文社文庫版がそこに110円で売られていたので買ってしまった。いずれまた再読したい。

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