2024年7月31日水曜日

雫井脩介「望み」(2016)

雫井脩介「望み」(2016)を角川文庫(2019)版で読む。
この作家の本を読むのは初めて。「クローズド・ノート」の作家だということだけ知ってる。これも読みたくて読んだというわけでなく、無償でいただいてきた本なのでなるべく早く読む。

この本はすでに映画になってるらしい。ぜんぜん知らなかった。自分が好き好んで読まないジャンル。たぶん、表紙から判断して崩壊寸前家族サスペンス。

思春期の高校生息子と高校受験を控えた中学生娘を抱える石川夫妻。夫は注文住宅のデザインが仕事。妻は在宅で建築雑誌の編集。
息子規士は夏休みになってから外泊が増えた。顔にあざを作ってたり、ナイフを購入してたりして父は不安を覚える。
9月の週末の夜、息子の規士が帰ってこない。一晩中連絡もつかない。近所で乗り捨てられた車のトランクから若い男性の遺体が見つかったというニュース。もしかしてその死体って?!

警察に電話。被害者少年は集団で暴行された痕跡。特徴はどうやら息子と違うようだ。
だが、妹の話だと被害者は兄と同じ高校で、その少年の名前を兄が話してたことがあるらしい。殺されたのは息子の友人?!もしかして息子は加害者なんじゃ…。
息子の友人たちと連絡を取ろうにも誰もわからない。

捜索願を提出。近所には雑誌記者がうろつき始めてる。少年2人が逃走中。そして3人が行方不明。息子は加害者か?被害者か?不安な父と母。
地元高校生たちの噂話を母親が匿名掲示板で探るのが現代ぽい。

少年事件の加害者かもしれないという状況に置かれた一家。メディアスクラム、取引先の決めつけ。夫婦で怒鳴り合い。絶望の妹。嫌がらせとしての卵投げ。
読んでいて気が滅入るし何も楽しくない。最後に何かスカッとする展開だけを期待してページをめくる。

父は息子が被害者であってくれと願う。母はただ生きていてくれれば加害者でもよいという心構え。そう信じこもうとする心理。

犯罪の被害者と加害者の家族の風景。こういうの、たぶん日本中で起こってる。憶測で犯人を特定して、冤罪家族に嫌味や嫌がらせをした側がいちばん罪深い。表面上の謝罪だけでいいのか?

あと、2012年に起こった「パソコン遠隔操作事件」で無実の罪で4人が誤認逮捕されたことも想い出した。うち少年Aの父は息子の無実を信じてやれなかったという後悔。こうして神奈川県警は日本を壊していってる。人間相互の信頼も壊してる。

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