なぜに表紙デザインがロシア構成主義っぽい?それはこの本を読めばわかる。
西武線沿線の「ひばりが丘団地」と「滝山団地」で生まれ育った筆者による、西武沿線と巨大集合住宅における戦後思想史…という触れ込み。
自分も長年東京に暮らしているので、王子、豊島、神谷、赤羽台、桐ヶ丘、北赤羽なんかで集合住宅というものは見ている。しかし、東京西郊の西武新宿線、池袋線に挟まれたエリアはあまり馴染みがなくて、「ひばりが丘」は名前はなんとなくしか知らなかった。スターハウスという存在も、この本を読むまでなんとなく聞いたことあるなという程度だった。
23区の劣悪な木賃宿から西郊へ脱出した戦後の若い家族たちが、無味乾燥なプレキャストコンクリート製の箱のような集合住宅が立ち並ぶ団地に住み、バスや鉄道で都心の職場へ通うというライフスタイルは、本人たちはアメリカ化してると思っていたかもしれないが、実はフルシチョフ時代モスクワの集合住宅ノーヴィ・チェリョームシキと似たものだった!それ、自分は気づいてなかった。
この本、思想史というけれど、その大都市郊外の団地で日本共産党が党勢拡大していく様子が詳しく書かれてる。ま、同じランクの学歴と所得層が同じ場所で均一な生活を送っているのなら、その婦人たちが市民運動と政治に関心を持ち、公民館に集まり自治会をつくり、革新左翼政党支持になっていくのはわかる気がする。
戦前から結核病院やらハンセン病の療養所が作られた清瀬から東村山。そして田無、保谷、の団地では共産党支持層が多かった…ということを知った。
そして西武鉄道の堤康次郎。この人は衆院議長を務めるうちに、1億国民の代表者で天皇と対等だと自身を思い込んでしまい、ついには鎌倉霊園に巨大な墳墓を作ってしまったもうひとりの天皇。
池袋と秩父を結ぶ特急レッドアローは運行開始が1969年10月13日。開通式で運転士に花束を渡したのは女優の酒井和歌子。
今まで考えたことなかったけど、レッドアローってどこかネーミングセンスがソ連ぽい。康次郎の息子・辻井喬はモスクワとレニングラードを結ぶ夜行列車クラースナヤ・ストレラーに乗ったことがあったらしい。そういうことだったのか。
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