2024年7月12日金曜日

京極夏彦「百器徒然袋・風」(2004)

京極夏彦「百器徒然袋・風」(2004 講談社NOVELS)を読む。これも無償でいただいてきた一冊。
オビに「薔薇十字探偵が撃砕する3つの怪事件!」とある。なので3本の短編を収録した一冊なわけだが、こいつが呆れるほど分厚い。なので普通に長編3本を収録したお得な一冊ともいえる。

自分、京極夏彦を読むのはこれが2冊目。2冊目がこれでいいのかわからないのだが、読み始めたら心地よく流れに身を任せられた。

第4番「五徳猫」(小説現代 2001年5月増刊号メフィスト掲載)
薔薇十字探偵・榎木津礼二郎の助手だという本島は、世田谷・豪徳寺で美津子という不幸な半生を持った29歳の女と出逢う。一家離散後に9歳で置屋に売られ、器量が良くもないために芸者にもなれず客もとれず、三業地・円山町の飲食業を経営する家で20年に渡って家政婦として奉公している。それって、戦後の新憲法日本で許されるのか?

美津子は空襲で焼け野原となった八王子に産みの母を20年ぶりに訪ねるのだが、母は自分のことがわからないという。
中野の古書店・京極堂の主人中禅寺秋彦の元を本島は訪ねる。民俗伝承蒐集家の沼上が先客として来ていた。ここから先は日本各地の怪猫伝説、猫と日本人の関係などの豊富な知識を聴かされる。招き猫の歴史を知る。
え、美津子が母を訪ねて行ったら母が母でなくなっているのは、日本各地でよく見られる猫伝承と同じ?!
終盤はドタバタ喜劇。

第5番「雲外鏡」(週刊アスキー 2001年8月7日号~10月30日号)
「五徳猫」で暴かなくていいことを暴いたせいで銀信閣が破産。出資者の加々美興行から恨みを買った薔薇十字探偵・榎木津。神田の事務所に出入りしている本島が拉致され神田のビルに監禁。
そこに駿東という老紳士(ヤクザ?)が耳打ち。縄を切って逃がしてくれるのだが、それだと裏切り者になってしまうからナイフで刺したフリという茶番を何者かに見せて逃がされる。

その話を中禅寺にする本島。中禅寺が本島の話を聴いて困惑。ひたすら榎木津を「バカ!」「迷惑!」「恥!」と本人不在の場所で罵倒しこき下ろす。
この話を読んで、このシリーズの主人公は榎木津ではなくて本島なんだと気づいた。

そして駿東は刺殺体で発見。権田という男が逮捕されるのだが否認。そして、名探偵の座をかけて神無月という探偵が榎木津に挑戦してくる…。
こちらも、困惑のドタバタ。

第6番「面霊気」(小説現代 2003年9月増刊号メフィスト~2004年5月増刊号メフィスト)
本島の友人で紙芝居描きの近藤の部屋に空き巣が入った。盗まれたものもあるのだが、近藤にも覚えのない封印された箱の中から翁の能面。

薔薇十字探偵社の元刑事探偵・益田が巻き込まれた窃盗犯疑惑。そして凡人・本島。すべて榎木津に関わったための騒動。最後は窃盗犯を懲らしめるドタバタ。

今回、京極夏彦の榎木津スピンオフ短編(ぜんぜん短編じゃない。むしろ長編。)3本を続けて読んだ。ああ、こういうものかと。3本すべてハチャメチャな榎木津が周囲を混乱させるというもの。
いい意味で冗長だなと感じた。いかなる状況も説明が不足しない。わかりやすい。

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