2024年7月5日金曜日

桐野夏生「錆びる心」(1997)

桐野夏生「錆びる心」(1997)を読む。2000年文春文庫で読む。桐野夏生を読むのはこれが初めて。
6本の短編を収録。1994年から1997年にかけて「オール読物」「小説現代」「小説すばる」誌などに掲載された後、1997年に文藝春秋社から単行本化。

こいつも処分するという中から無償でいただいてきた一冊。自分の場合、読みたい本があるから読むのでなく、読まれない本がそこにあるから読む感じ。本は山に似ている。
表紙から判断して、嫌な味のするサスペンス的な内容だと期待して読む。

「虫卵の配列」
ミミズやヤスデといった不気味な生物は触っても平気なのに、規則正しく生みつけられた虫の卵はダメだという女性の生物教師が友人に語る、とある劇作家との失恋打ち明け話。だが、その実態は話に聴いていたのとはまるで違っていて…。

「羊歯の庭」
学生以来再開した中年男女の不倫。女は陶芸を、男は絵を描くために田舎に家を買おうとするのだが、実はその家は事故物件だった…。

「ジェイソン」
自覚のない酒乱の女子大助教授。昨晩なにかやらかしたようだ。妻も家を出て行った。自分が何をやったのか友人たちに聴いて回るが、みんな口をつぐむ…。

「月下の楽園」
荒廃していく庭を見るのが好きという変態塾講師による独白。男に離れを貸した偏屈ババアの大家のカオスな争い。なんか乱歩っぽい。こういうクセの強い大家がいる物件を借りてはいけないと思った。

「ネオン」
歌舞伎町の中の小さなシマでシノギをやってる桜井組に、「仁義なき戦い」オタの若者が組員にしてくれとやってくる。似非広島弁を話す島尻に不安を感じつつも組に入れることを決定した桜井だったのだが…、というヤクザ映画の一場面のような読物。

「錆びる心」
家出妻が住み込み家政婦の仕事を探すのだがなかなか条件のいいところは見つからず。やっと見つけた家には知恵遅れの20歳ぐらいの娘と、癌で余命宣告された40男…。

なんか、世の中みんな大変だな…という短編文芸読み物。

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