2024年7月29日月曜日

二階堂黎人「吸血の家」(1995)

二階堂黎人「吸血の家」(1995)を講談社文庫(1999)で読む。1995年10月に立風書房から立風ノベルスとして出版されたものを加筆修正して文庫化。
こいつもコロナ期にBOで110円で購入しておいた3年積読本。なにせ583Pの大長編でなかなか読み始めれなかった。

プロローグで文政年間の八王子、甲州街道にあったという妓楼での狂った遊女の悲劇をささっと紹介。
そして昭和44年1月の東京国立。一橋大学生の二階堂蘭子と黎人。同じ年の血のつながらない兄と妹。父は警視正。喫茶店で探偵小説談義。みんな東西の古典ミステリーオタ。
そこに狂った女がやって来て、「近々、八王子の料亭久月で殺人が起こる」と言い残して姿を消す。

元妓楼から料亭に商売を変えた久月。女系家族でみんな美人。二階堂家とは親戚。
24年前、戦争末期の昭和20年に久月では、脱走兵が短刀が首に刺さった状態で死んでいる…という事件が発生。雪面には被害者の足跡しかない…というミステリー。だが、軍部からの圧力によって迷宮入り。

この久月で起こる連続猟奇殺人。蘭子と黎人、事件を担当した中村警部、若手刑事の村上が事件に挑む!

降霊会、悪魔の笛、日本刀、密室、過去の因縁により呪われた一族、出生の秘密、すごく横溝正史「悪魔の手毬唄」へのオマージュ感がする。著者による巻末解説を読むとまさにそれ。

さらに、被害者と第一発見者の足跡しかないテニスコートの刺殺体。これもディクスン・カー「テニスコートの謎」へのオマージュ。自分、この2作が既読でよかった。
あと、八王子田町の遊郭跡へ行ったことある自分としては興味深くページをめくれた。文体も読みやすくわかりやすい。

もう、過去の英米・日本の古典名作ミステリー小説への愛であふれた探偵小説の大力作。とにかく雰囲気が良い。お約束の世界観。
もう横溝も、カーも、エラリーもすべて読んでしまって読む本がないよ~というミステリー愛好家向け。とくにディクスン・カー延長戦という感じ。

新本格に登場する探偵たち、とくにこの二階堂蘭子は大学生とは思えない頭脳と人間的成熟。そこはスーパー名探偵が活躍した古きよき探偵小説への愛。

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