2024年7月8日月曜日

谷崎潤一郎「猫と庄造と二人のおんな」(昭和11年)

谷崎潤一郎「猫と庄造と二人のおんな」(昭和11年)を読む。新潮文庫(平成8年61刷)を無償でいただいたので読む。
今まで気づいてなかった。谷崎の新潮文庫版の表紙デザインは加山又造(1927-2004)だったということを。

これ、123ページと短いのであっという間に読めてしまう。蘆屋の荒物屋の若主人庄造がリリーという雌猫を飼っているのだが、鯵を口移しで与えるなど異常な溺愛ぶり。
その一方で現妻の福子は呆れてるのか?とくに猫を可愛がるでもない。

福子に庄造の前妻・品子から手紙。「せめてリリーだけでもくれ」
福子の説得で庄造はリリーを品子へ渡す。品子は庄造の母おりんによって離縁させらていた。

品子は妹夫妻の家に身を寄せてお針子で生計をたてている。猫が心配でこっそり見に行く。リリーは庄造が20歳から30歳まで飼っていたので、もう老猫。だいぶ弱ってるので心配。
そこに品子が帰ってきて、慌てて逃げ出す…という、上方コトバによる男1人女2人の三角関係を描いた文芸。

読んでいて愉快ではあった。ドラマとして風景が頭に浮かびやすい。

昭和11年というと帝都では2.26事件が起こったりとピリピリした時代。だが、この庄造という男は想像を絶するダメ人間w なんだか覇気もないし母に甘えてるし従順のようでいてずるいというボンクラ旦那。蘆屋ではこれでよかったのかもしれない。戦前の関西はこんな人でも許されていたのかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿