2024年6月17日月曜日

湊かなえ「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(2016)

湊かなえ「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(2016)を2019年乃木坂文庫(光文社文庫)版で読む。これ、数年前に一度読もうとしたのだが「今はこれを読む気分じゃないな」と放置していた。今、読む気になった。

6本の厭な鬱短編を収録。5本が「宝石ザ・ミステリー」誌2012年~2015年に掲載されたもの。最後の「ホーリーマザー」のみ単行本化時の書き下ろし。では順番に読んでいく。

「マイディアレスト」(初出時のタイトルは「蚤取り」)
妊婦の妹が暴行通り魔に襲われた姉の独白。毒親母に厳しく育てられ、男子と付き合うことすら許されなかった姉。この母が妹には全てにおいて甘く、しかもだらしなさそうな男と付き合って妊娠したことすらも容認。なぜ姉妹でそこまで接し方が違う?という恨み。最後はサスペンス。
これ読んだだけで湊かなえが天才だとわかる。嫌な後味しか残らないけど味わい深い。

「ベストフレンド」
新人賞に応募したヒロイン。優秀賞に選ばれたけど、大賞に選ばれたのはあの女。アイツさえいなければ…。
同期の新人ということでメールアドレスを交換したけど、あの女がどんどん出世していく。その一方で不運な自分。やがてアイツを殺してやろうと考えるのだが。
これも意外なラスト。これを読んでも湊かなえの天才ぶりがわかる。

「罪深き女」
毒親母子家庭に育った少女。住んでいたボロアパートの上の階には6歳年下の男子児童とその母親が住んでいたのだが、男を連れ込むなどして子を外に放置するネグレクト母?
その男児がやがて家電量販店で無差別殺傷事件を起こす。
本人がそう感じていたことと実際は大きな乖離と誤解があった…という厭な話。これも湊かなえに感心しかしない。

「優しい人」
誰にでも優しくという教育をされた女子の末路。これも毒親テーマか?

「ポイズンドーター」
平成日本の毒親母子家庭という地獄。勉強だけ強要され、男子と喋ることも許されず…という家庭で育った女優の回想告白。
「ホーリーマザー」
ポイズンドーターの後日談。書き下ろし。この2作はセット。
母親が毒親だったと告白して反響。その後、母が交通事故で死亡。母を知る人々が「あの人は毒親なんかじゃなかった!」「子を心配してちょっと干渉したらそれだけで毒親なの?」という反論。

すべて読後に嫌な気分。すべて若い女性が主人公。湊かなえは平成令和の松本清張。
PS. 高山一実「トラペジウム」が思い込みの強い腹黒ヒロイン東ゆう主観だったのは、高山が湊かなえの熱心な読者だったことも影響しているのでは?と思った。ヒロインの質感が似ている気がする。

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