2024年6月15日土曜日

陳舜臣「闇の金魚」(1977)

陳舜臣「闇の金魚」を2000年徳間文庫版で読む。この作品は1977年に講談社から刊行されたもの。
陳舜臣(1924-2015)の小説を読むのは今回が初めて。神戸出身の中国人作家。
これも処分するというのでもらってきた本。自分の意思で読みたいという本をぜんぜん読んでない。

童承庭くんは早くに両親を亡くしたが、読み書きを覚えるのが速い。農民のままでいるのは惜しいからと上海の商社「永源昌」の谷瑞書にあずけられる。時代は辛亥革命で清朝が倒れたばかり。激動の中国。

日本語を学ばせればめきめき上達。日本へ留学に出される。当時の日本の学生知識人は無政府主義者やら社会主義者やら。上海から一緒にやってきた学友の徐友岳は童よりも年上だが、役者を目指したこともあるやさ男。闇の中で畸形の金魚を育ててる。こいつが徐に社会の変革を説く。

やがて谷星子という日本語が上手な中国人女性と出会う。政治運動に傾倒していく過程で、なぜかこの星子と偽装結婚し上海へ戻ることに。やがて正式に結婚するのだが、星子は失踪。え、拉致誘拐?やがて星子の手紙を持った目の細い男が脅迫にやってくる。北京に行け。

陳先生が当時の北京の政治と軍閥、日本、英国、米国の勢力争いを優しく解説して教えてくれる。
袁世凱の死後、段祺瑞総理は日本と取引する祖国の裏切り者扱いで民から人気がない。安徽派と直隷派(曹錕、呉佩孚)の争いは直隷派に傾く。そこに日本はさらに人気のない軍閥・張作霖に接近。

童は謎の日本人・大垣に接触するために、まず薬草を扱う市川に接触。するとそこにあの自分を脅迫してきた目の細い男。妻は目の病気で治療を受けている?!

敵と味方の組織のスパイ小説?殺人も発生してるけど、あんまりスリラー要素もサスペンス要素もなかった。童承庭という中国人青年の青春と冒険を描いた文芸作品という感じ。
近現代中国史を活字として読むだけでなく、こういった小説を読むとより理解が進む…気がする。

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