2024年4月10日水曜日

未解決事件 File.10「下山事件」第1部ドラマ編

未解決事件 File.10「下山事件」第1部ドラマパートが3月30日(土)NHK総合で19:30から大々的に放送された。もちろん録画してじっくり見た。脚本は安達奈緒子、演出は梶原登城。音楽は川井憲次。

下山事件に関心を持つとあまりの登場人物の多さに呆れる。自分も松本清張「日本の黒い霧」を読んで以来ずっと興味を持っていろんな本を読んでる。それでも10年ぐらいブランクがあったので、忘れてることが多い。

今回は下山事件を担当した布施主任検事(森山未來)を主人公にした検察側からの下山事件にのみ焦点。
なので、それ以外の様々な謎要素はバッサリとカット。
そして朝日新聞の下山事件スペシャリスト矢田喜美雄記者(佐藤隆太)。この人が事件捜査初期にルミノール試薬など持ち込んだりして大活躍。

下山事件はこれまで多くの映画やドキュメンタリーが制作されている。それぞれ違った視点を持っている。今回のNHKスペシャルは「極秘資料を入手」ということで、謎の韓国人スパイ李中煥(玉置玲央)という人物を、名もなきスパイ工作員の悲しい末路を描くためのメインキャラとしてクローズアップ。
このドラマ、一般視聴者が何かしながら土曜の夜を過ごすドラマとしてはギリ。おそらく下山事件ビギナーにとっては頭に入りずらい内容だったのではないか?

当時の米ソ冷戦、中華人民共和国誕生、朝鮮半島などの国際情勢、戦後の社会情勢、国鉄という組織、中国大陸で暗躍した特務機関、それらの予備知識がない若者は早々に現在地を見失う。(昭和20年代のオフィスでのたばこの煙の描きぐあいがとてもよい。)
事件を計画立案し、下山国鉄総裁を拉致して殺害した実行犯は誰か?中国大陸で暗躍した日本の特務機関の人脈を追及するための人物相関図などは、普通の視聴者の頭には入ってこないと思われる。

そもそも米軍は事件を共産主義者によるものにしたかったはず。なのになんで自殺であるかのように見せかける?遺体発見現場を下山総裁と同じ服装の工作員をウロウロさせた?

そこはドラマでしっかり説明。もしも総裁殺害に旧陸軍軍人が関わっていたことが日本人に知られたらどうなる?日本再軍備に向けた旧特務機関員たちの必死のリカバリー。
でも、もしも偽下山総裁が現場で職質とか受けていたらどうなっていた?
読売新聞記者の下山事件エキスパート鑓水記者(溝端淳平)も登場。自分、八王子方面から鎌倉へ向かう途中に鑓水という地名を見ると、いつも鑓水情報の鑓水記者を思い出していた。

この鑓水記者は事件に関わった人物の証言を引っぱってきたりと下山事件の調査に多大な貢献をした人なのだが、おそらくその情報の多くは、捜査かく乱を狙った勢力がばらまいた偽情報。鑓水も調査の妨害や脅迫に遭っていたらしい。とにかく下山事件を追いかけるのは命がけ。

米軍関係者には話を聞くこともできない。日系将校が捜査を止めるように言ってくる。
それに時効成立が近づいてくると、またさらに証言者が出てきたりする。しかもその証言者を追いかけてもぐるぐる迷路をさ迷い、結果として袋小路に行きつく。それが下山事件。
布施検事と矢田記者が操車場で意見交換するのだが、これって「シン・仮面ライダー」のロケ地だ!

一般視聴者向けドラマとするためには、正義の熱血検察官と記者を主人公にする脚本しかなかった。アメリカに従うしかない日本。静かな怒り。
だが、その結果がロッキード事件での田中逮捕?!それもアメリカの手の上で踊らされてるのかもしれないけど…と布施検事もわかってた様子。
田中逮捕の号外が配られるシーンでの街並みセットがまるで昭和51年の東京らしくなくてつっこんだ。

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