映画にもなった「記憶屋」と同じ作者。初めて読む作家。
第1話「あの子はついてない」
母と中学生娘のふたり家族が、とある中古賃貸一軒家に引っ越してくる。娘の茜里だけが、この家の嫌な何かに気づき始める。
知らないうちに見たことのない髪の毛が落ちてたり、テレビが点いたり消えたりする。庭の花壇が雨も降らないのに濡れているし、人の顔のようにも見える。
塩を盛っておいても、崩されている。悪夢も見る。庭に見知らぬ男性の姿を見て、ついに母に打ち明ける…。
第1話だけでも短編として完成してる。ただしそれは「ほんとにあった怖い話」レベルの都市型怪談。
第2話「その家には何もない」
その一軒家では賃貸人が短期間で次々と入れ替わっている。出て行くときそれなりの理由は言うけど、なにか変だ。
不動産仲介業の朝見は、フリーライターにいわくつき物件の紹介を求められる。その問題の家を内覧したいと言い出して…。
第2話は第1話の怪談を合理的に説明。ここまで読めば、怪奇現象の起る家が、実は科学的に論理的に説明がつくという、日常系ミステリーのような話に落ち着く。
第3話「そこにはいない」
その家をずっと隣人として観察していた三ツ谷が登場。第1話の不思議現象は第2話で解決したと見せかけて、その背後にあった真実パート。
ああ、そういう構成か!と驚けた。第3話の前半までは面白かった。背後にあった真実と犯罪。
だが、悪い意味で予想外な展開。なんだか焦点と方向性が定まってない主人公のふらふらした思考に、読者はイライラする。
第1話だけ読んだ人、第2話まで読んだ人、全3話を読んだ人、それぞれでこの本の印象は大きく変わるに違いない。その点で野心作。
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