2024年3月19日火曜日

横溝正史「金田一耕助の新冒険」

横溝正史「金田一耕助の新冒険」の2002年光文社文庫版がそこに110円で売られてたので連れ帰った。それなりに読み跡のある中程度のコンディション。昨年2月に購入し積読しておいたもの。

「冒険」を読んでないのに「新冒険」を先に読んでいいのか?ちょっと躊躇したけど、おそらくどちらを先に読もうと関係ない。昭和31年~38年に発表された短編を集めた一冊。
目次を見てみると、読んだことある作品がちらほら。

もう角川文庫版で読んでないのは残り数冊。「死神の矢」「魔女の暦」が読みたいけど角川文庫版は今日に至るまで程度の良いものを見つけられなかった。なのでこの光文社文庫版で読むことにする。読んだことがあるものも読む。
  1. 悪魔の降誕祭
  2. 死神の矢
  3. 霧の別荘
  4. 百唇譜
  5. 青蜥蜴
  6. 魔女の暦
  7. ハートのクイン
「悪魔の降誕祭」「霧の別荘」は久しぶりに読んだけど、こんなアッサリ突然の幕引きのような終わり方だったっけ?と多少驚いた。

「百唇譜」「青蜥蜴」「ハートのクイン」はすべて後に長編や中編に改題リライトされている。そちらは読んでいるのだが、内容がかなり違っている印象。

「死神の矢」は、結婚適齢期の娘の求婚者の中から、洋上に浮かべた的を弓矢で射る競技で決める。当たるわけないと思いきや、当てた求婚者がいる。だが、選に漏れた求婚者が殺されるという「ユリシーズ」のような展開。
「結局、片瀬における白箭殺人事件は、未解決のままに荏苒として時がすぎていった。」
という箇所で「荏苒(じんぜん)として」という言葉を学んだ。横溝先生はたまに難しい言葉を使う。

「魔女の暦」ストリッパー連続殺人。アプレゲールな若者たちは性が乱れすぎ。
「この女が一座のなかでもいちばん伝法な口のききかたをする。」
「伝法な口のききかた」という言葉を初めて知った。「伝法な」とは「粗暴で無法な」という意味だと、今回調べて知った。
さらに、犯人から不審な誘いの手紙でストリップ小屋におびき出され、殺人現場に遭遇し、等々力警部と出会って金田一さん
「なあに、ぼくだってたまにゃストリップ見物ぐらいしまさあね。浩然の気をやしなうってやつですかね。あっはっは」
「浩然の気をやしなう」という言葉を初めて知った。これは孟子からの言葉らしいのだが、調べてみてもわかるようなわからないような。

「ハートのクイン」で刺青の老彫師が交通事故死する現場が新宿御苑の四谷側(内藤町)にある多武峯神社というところなのだが、そこは一度も行ったことないな。
30年代の横溝作品は内容がゲスいものが多いな。

この文庫版は巻末に「金田一耕助の登場する全作品(少年ものを除く)リストが掲載してあって便利。まだ読んでない金田一ものがいくつかあるなと。探しても見つからないものは図書館をたよることになりそうだ。

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