ヒロインの里英は19歳で芸大受験に2度失敗して浪人中。日々、悶々としている。
若くして成功し資産家となった伯父が亡くなり、その弟である父(webデザインなどをしてる)が、南紀白浜の沖合5kmに浮かぶ無人島・枝内島を伯父から相続。この島にはかつて伯父が建てた別荘やバンガローなどの宿泊施設がある。
観光開発業者が購入を希望。父が開発業者、不動産業者、工務店、伯父の友人などの面々9人と下見と今後の相談を兼ねて、漁船をチャーターして島に行く。里英も気晴らしを兼ねて「行かないか」と誘われる。
枝内島は周囲1kmに満たないほぼ円形の、切り立った崖の島。周辺海域は波が高く泳ぐことはできない。10年ぶりに島を訪れた里英。かつて島を訪れた記憶と伯父の想い出がよみがえる。
放置された5年の間に島は草に覆われ、バンガローなどの建物も傷んでる。だが、島には最近も誰かがいた形跡がある。伯父の所有物?だったかもしれないクロスボウや大量の爆薬など物騒なものが置いてある。なんかちょっと不気味。もしかしてテロ集団がアジトにしてるの?
しかし、飲料水や食料、発電機を動かすガソリンなどしっかり準備してきたので1泊することにした。
里英は不動産会社の研修として同行した若く魅力的な女性の綾川さんと同じ部屋。初対面だけどこの人とならいろいろ話せそう。
翌朝、同行してた不動産会社社員が背中にクロスボウが刺さった状態で、崖下にうつ伏せ状態で死んでいるのが発見。
さらに、犯人からメモ書き指示。10か条のルールを強制される。わりと細かいのだが、要約すると、3日間島にとどまってじっとしてろ!外部と連絡とるな!スマホを使うな!犯人を詮索するな!話し合うな!さもないと島を爆破して吹き飛ばす!ええぇぇ~…。
里英は、ずっと部屋に一緒にいてアリバイがしっかりしてる綾川さんと、優柔不断な父は信用できるとして、3人で相談。本当に爆弾が仕掛けてあるのか?犯人の目的は何か?なぜ3日間?
そして第2、第3の殺人。人質となった滞在者たちは犯人からの指示で現場の遺体や証拠を隠ぺいする作業もさせられる。だが、綾川さんが頭よすぎて色んなことに気づいてる…。
わりと強引にトリッキーでユニークな孤島クローズドサークル連続殺人ミステリー。開始3分の1あたりまではワクワクしながらページをめくれた。
だが、この犯罪を実際に行うのはいろいろ無理があるのでは?と思えた。荒唐無稽感がした。世の中はマトモな思考能力を持った人しかいないわけではない。ひねくれすぎて予想外の行動をする人質もいるかもしれない。
ジャンル的に人質サスペンスだったかもしれない。十代ヒロインの青春ミステリーだったかもしれない。
「方舟」はディザスターパニックサスペンスホラーとして傑作だった。「十戒」も何か最悪なバッドエンドが?と身構えていたけど、ミステリー小説ではわりとよくある「さらに意外な真相」というやつ。正直、「方舟」のほうが好き。
あと、この本は2020年のレバノン・ベイルート港爆発事件が着想のヒントになったんじゃないかと感じた。
0 件のコメント:
コメントを投稿