なにげに自分、これが初めてのチャンドラー。初めての私立探偵フィリップ・マーロウ。これを読めば葉山のマーロウ・プリンに行っても大丈夫。
THE LONG GOOD-BYE by Raymond Chandler 1953
レイモンド・チャンドラー(1888-1959)はアメリカ・シカゴに生れ、両親離婚後に母と共にイギリスに渡りロンドンのパブリックスクールで教育を受けた後に、再びアメリカに戻り第1次大戦後から小説を書き始めた…という経歴。
友人テリー・レイノックスをメキシコに送り届けたマーロウは戻るなり警察に勾留される。え、テリーは資産家妻シルヴィアを殺害した容疑者?犯人の逃亡を手助けしたとすればそれは事後従犯。
警察の対応が乱暴。この時代は日本でも後に問題化する暴力的な自白の強要と冤罪。1950年代はアメリカも、とくに殺人課の刑事たち、検察官はみんは粗暴で品がない。いやそれは今もあまり変わってないか。
そしてテリーはメキシコの小さな村で自殺?!マーロウの元へ5000ドル紙幣入りの手紙?!
第4代ジェームズ・マディソン大統領の肖像入り?いや、びっくりした。そんな高額紙幣があることに。この本を読まなければ知らないままだった。
マーロウ探偵は実力者からも過去を掘り返さないように警告もされる。それでも友人の汚名を晴らすために調査。
それにしてもアメリカ人たち、みんな短気だし口汚い。マーロウも紳士のようで聞き込みにいってるのに相手を怒らせてどうする。アメリカって弁護士や医者になっても才覚がないと金持ちにはなれないのか。
医者になれるほど真面目で頭がよくてもすぐキレる。職業倫理も高くない?
お金でなんでもできると思うなよ。これだから移民の国の肉食系民族たちは。メキシコの警察官ってすぐ発砲するってマジか。それは昔のことだと信じたい。いや、アメリカは今も毎日発砲事件があるし、本当にそうなのかもしれん。
なかなか物語が進展していないようで読んでいてイライラもした。全体の5分の4ほど読んだ時点で真相がわかる。だが、最後に驚きの真相。ああ、さすが長年語り継がれる名作だ。
これは映画やドラマを見まくってる現代人からするとそれほど驚くことではないかもだが。
あと、やはり英米文学特有の読みづらさを感じた。翻訳者もこの男と男の友情物語を正しく魅力的に伝えることにそれなりの苦労がある様子。
巻末では簡単に過去の清水俊二訳、村上春樹訳なども言及し比較。今回の田口訳では銃器に関する知識のなかったチャンドラーを補うためにも専門家の意見も参考。
あと、村上春樹がレコード本で、マーロウ探偵がハチャトゥリアン(ソ連アルメニアの作曲家)のヴァイオリン協奏曲を酷評してる箇所があると紹介してたような記憶がある。本当にマーロウがラジオでその曲に悪態をつく箇所があった。
チャンドラーはクラシック(当時のコンテンポラリー)に造詣が深かったようだ。ヒンデミットとかトスカニーニという名前も登場する。
マーロウシリーズでこいつが一番の傑作で大作らしい。正直、自分はそれほどハマれたというわけでもないのだが、今後このシリーズをゆっくり読んでいく。
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