高野和明「13階段」(2001)を2004年講談社文庫版で読む。
第47回江戸川乱歩賞受賞作とある。たぶん多くの読者に読まれたであろう1冊。自分はこの作家の本を読むのは初めて。たぶんこの作家で一番有名な本。
この人は映画製作の現場で脚本執筆などの経歴を積んだ後に作家となったらしい。
不良に絡まれて相手を死なせてしまった三上は、高校時代に女子生徒と一緒に家出して補導された過去から心証を悪くしてしまい、2年の実刑をくらってしまう。だが模範的にふるまって仮出所。しかし社会の目は冷たい。ただ両親は優しく自分を迎え入れてくれた。被害者遺族への損害賠償金7000万円の支払いで両親は工場を失い家を失いつつましい生活。
中年刑務官の南郷に見込まれて、とある冤罪事件で死刑が確定している樹原(事件直後に現場近くで転倒事故により記憶喪失)に死刑執行のタイムリミットが迫る状況で、南郷に雇われた三上は一緒にペアを組んで再調査開始。
ここから先は探偵小説のような展開。ドラマ「エルピス」が好きな人には刺さる内容かもしれない。
刑務官南郷が語る日本の死刑制度の問題や刑務官のメンタルの過酷さ、そして死刑執行の細かい手順と描写が読んでてつらい。
だがそれでもこの日本製ウィリアム・アイリッシュとでもいうべき古典的ベタさは荒唐無稽な感じもしなくはないが、予想のつかない真相とハラハラドキドキ展開はとても魅力的だし読んでいて面白く楽しい娯楽作だった。
これはゼロ年代を代表する名作サスペンスの1冊と呼んで差し支えない。ページをずんずんめくれる。
死刑制度のある日本。あなたの産む子どもは将来、冤罪を掛けられ司直によって罠にはめられるように死刑にされるかもしれない。反対に、誰かを死刑に落とし込む側になるかもしれない。死刑囚を奈落に落とすスイッチを押す刑務官や検察官になるかもしれない。
労働者不足の日本に進んでやってくる外国人にも言いたい。日本には性格の悪い警察官と検察官がいて死刑制度があるということを周知させる必要もある。
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