長野県佐久市の望月宿にある井出野屋旅館さんを一目見たくて、友人とキャンプへ出かける前に、現場へ行ってみた。昨年10月下旬のこと。
この旅館こそが、市川崑監督による名探偵金田一耕助シリーズ第1作「犬神家の一族」(1976)において、「那須ホテル」のロケ地として使用された旅館。
コロナ前から友人と「いつか泊りに行きたいね」と話してたのだが、そのコロナと経営者夫妻高齢化という時間の試練に耐えられず、昨年の春先に引退廃業と旅館建物の売却がニュースとして伝わってきた。ああ、残念…と思ってた。
外から写真を撮ったら退散するつもりで、旅館の玄関前に到着してみたら、玄関前で草刈鎌で雑草を刈り取ってる婦人がいる。玄関が開いている。
どうやら我々の前に先客もいる。え、内部見れるの?!と驚いていると、「どうぞご覧になってください」と入ることを促された。
もしかして、この40代ぐらいの女性が新オーナー?
話によれば、「来年の春ごろには旅館を再オープンさせたい」とのこと。「い、いちど泊りに来たいと思ってたんです!」
この女性が親切な方で良かった。望月宿の貴重な文化遺産として、外部からやってきた自分たちに自由に見せてくれるような心の広い方で良かった。
玄関に立つ。
石坂浩二金田一耕助が立った玄関に今我々が立っている!
そこの引き戸から横溝正史先生が顔を出す!
女中坂口良子さんがスリッパと宿帳を出してくる…というような場面を思い浮かべる。
熱い感動が蘇る!
各部屋の窓も襖もすべて開放して風を通してる。床はつるつるにキレイ。室内の家具、調度品はすべて処分した?調理場だったらしい場所も内部には何もなかった。
ああ、石坂金田一さんがこちらに向かって走ってくるシーンが見える!
思う存分に見て歩く。営業してた時期は各部屋すべてを見るなんてきっと不可能だった。この建物がちゃんと旅館として営業を希望する人の手に渡ってよかった。映画での部屋内部シーンは実際はセット。当旅館の部屋はこんな感じ。
この旅館は三階建て。三階にも登ってみる。こうなってる。映画シーンとは違っている。
若林弁護士の死体を発見した坂口良子が悲鳴をあげるのを聴きつけ、階段を慌てて駆け降りる石坂浩二さん。どうやらそのシーンは市川崑による切り貼り。
しかし、若林弁護士が倒れていた水場は撮影当時とあまり変わらずにそこにあった。
いやもう感動。ただ建物を外から見るだけで帰るつもりが、こんなにも内部全て見られるとは。
この記事のUPのタイミングを計っていたら、ようやく開業のメドがたちつつあるようなので公開。内部をVRで見れるのかよ。時代は変わった。(予約などはまだできない)
この旅館が再開したら、なんとかまたここに来たい。泊まりたい。
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