2024年2月27日火曜日

岡嶋二人「解決まではあと6人」(1985)

岡嶋二人「解決まではあと6人 5W1H殺人事件を読む。1985年に「5W1H殺人事件」として双葉ノベルスから刊行。89年に「解決まではあと6人」に改題され双葉文庫化。1994年に現在のタイトルになって講談社文庫化。

この本、今まで読んだことのない構成。平林貴子という謎の女性が探偵事務所にやってきて調査依頼。それが「このカメラの持ち主を調べてくれ」というもの。
女性は住所も職業も明かさない。調査の目的も教えない。
で、探偵が方々に聞き込みしてとあるアパートを訪ねると腐乱死体を発見。行方知れずだった大学生が殺され、その部屋の男が逃走?指名手配へ。

次に「Vで始まる名前で、緑色のマッチを使っている喫茶店」を探すように、別の探偵事務所に依頼。
探偵は東京中の喫茶店を探し回る。経験とカンとひらめきによって探し出す。(この時代にインターネットはない)

平林は別の探偵に「盗難車の後部シートがなくなった理由」という調査依頼。読者はもう何がなんだか。
この探偵が尾行されたり逆に尾行したり。

さらに別の探偵には「わけのわからない音が入ったカセットテープに秘められているらしい情報」を探り出してほしいという調査依頼。
ここでも探偵が持てる力と伝手を使ってブレイクスルー。暗号を解く。
これが昭和末期に情報工学系学生だった人でしかわからないであろうもの。昭和時代はコンピューターの外部記録メディアがカセットテープって、今の若者は信じられないかもしれない。

そして最後の探偵には、「とある男を呼び出して、ある男の行方について聞いてみる」というもの。
ジャンル的には社会派推理小説だが、こんな断片的でこんがらがった情報を与えられた読者は誰だって混乱する。
しかし、その構成と語り口がとても巧妙。それでいてページをめくっていく推進力。まったく予想のできない展開。

多くの探偵が登場するけど、5軒の探偵社の彼らに横のつながりが一切ない。お互いに会うことがない。
最後に意外な真相と犯人まで用意。主人公とは思われなかった若手刑事の意外な活躍。ああ、岡嶋二人はこれほどまで野心的な作家だったのか。

昭和時代は個人情報の管理が甘々。探偵が聴きこみ先の大学で学生名簿のコピーも採れるの?!顧客の情報も教えるの?警察が探偵に依頼人を教えろとか言うの?!
かなりの部分で今の時代と合わなくなってる。

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