村上春樹「海辺のカフカ」(2002)新潮社上下巻を読む。令和の今になってやっと読む気になる。たぶん当時の大ベストセラー。たぶんこのころからもう村上春樹は何か新刊を出せば大きな話題とニュースになる作家。
村上春樹を誰かに説明しようとしても難しい。なんとも言えないストーリー。
15歳少年、田村カフカ(偽名)が家出して四国高松へ高速バスの旅。この当時はもう本四連絡橋が建っている。
この少年が最初の方では「カラスと呼ばれる少年」と会話してるのだが、それは脳内にいる別人格?自問自答の話し相手?
この子は彫刻家父と暮らしている。幼いころに両親離婚によって母親は出て行ってしまって不在。
そして戦争中に山梨の山の中で発生した、キノコ狩り遠足児童集団失神事件とその米軍情報局報告書。
この事故以後、ただ一人後遺症が出て読み書きができなくなった少年がナカタさん。知事からホジョを受けて生活してるぼんやり弱者老人。仕事はしてないが、たまにネコ探しで報酬を得る。
カフカくんは15歳中学生なのに17歳と偽りYMCAホテルに宿泊。お金を節約する必要がある。やがて俳句と古典文学専門の私設図書館のような場所に出入り。親切で頭が良くて緑のスポーツカーを乗り回す大島さん(この人は上巻終盤で意外な特殊性が明かされる)と出会う。
大島さんはクルマでクラシック音楽を流す。シューベルトのニ長調ソナタについて、少年に講釈を垂れる場面がある。このニ長調ソナタって第17番ソナタのこと?
自分、ベートーヴェンは1番から32番まで満遍なくローテーションで聴いているけど、シューベルトはほぼ19、20、21番ばかり繰り返し聴いている。17番は聴いたことはあっても特別注意して聴いてなかったし印象もなかった曲。
カフカくんは目を覚ますと神社で倒れている。シャツには血が。やがて父親の彫刻家(ほとんど口も利かなくなっていた)が自宅で刺殺体となって発見される。なにやらミステリーの雰囲気。
しかし、空からアジやサバが降ってくるなど、ファンタジーの雰囲気もある。
上巻はジョニー・ウォーカーのネコ殺し描写が怖い。猫好きの人は読み飛ばすべき。
そして、私設図書館にフェミ・アクティヴィストが凸してくるシーンも怖い。こういうとき、ひろゆきのような論破力が役に立つ。
そして下巻へ。中野区から出たことのなかったナカタさんはヒッチハイクで四国を目指す旅に出る。星野青年という中日ドラゴンズの帽子をかぶったアロハシャツのトラックドライバーも同行者に加わる。
ポン引きカーネル・サンダース、入口の石、さくらさん、佐伯さん、少女の幽霊、いろんな人が登場。そしてカフカくんとナカタさんへ警察の追及が?!
カフカくんとナカタさんは一体どう絡む?
上巻の段階では「今まで読んだ村上春樹長編でいちばん面白いかも!」と感じたのだが、それは過大な期待だったようだ。一点に収束していく何かを期待したのだが、結果として発散だった。正直退屈した。
終盤は少年と老人の謎ミッション。意味はわからないが手順を踏んでしなければならないとか、タルコフスキーの「ノスタルジア」とか「サクリファイス」を連想せずにいられない。
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