2024年2月16日金曜日

森博嗣「すべてがFになる」(1996)

森博嗣「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」(1996)を講談社文庫2013年48刷(!)で読む。
この作家の本を読むのは初めて。今まで背表紙は何度も見かけていたのだが、こいつはわりと90年代の有名作なので読んでおこうかと。著者はどうやら大学の工学部助教授博士が本職?

N大学の建築学科の助教授・犀川と学部1年生西之園萌絵は他学生たち(研究室の学生なのでみんな年上)と一緒に夏に愛知県のとある離島へ夏休みの海水浴&キャンプへ。
だがその島は、天才プログラマー工学博士・真賀田四季のIT研究施設がある孤島。

この研究施設は、50人ほどの研究者が外部から完全に隔離されたように居住&研究部屋が与えられ、四季に至っては15年この施設から出ていない?!四季は14歳のときに両親(工学博士)を刺殺した多重人格者?!

犀川と萌絵は四季にお目にかかりたいと島の施設を訪問。だが、施設内では四季と連絡が取れない状態になっているという。
デボラというシステムによって管理されている施設内の四季の部屋に、異常を察した他研究者たちと突入すると、部屋には両手両足を切断されウェディング・ドレスを着させられ、ワゴン型ロボットに乗った状態。こちらに向きを変えて向かってくる!それは恐怖。
孤島、隔離された研究施設、コンピューターで管理された部屋という三重密室での殺人。

システムの異常により島外からのメールは閲覧できるのだが送信はできない。警察に連絡を取ろうと所長がヘリの無線で警察と連絡を取ろうとするも、コックピットで刺殺された状態で発見。
犀川先生と萌絵のふたりが警察が来る前に謎を解く!というクローズドサークル連続殺人ミステリー。

かと思いきや、愛知県警の捜査員一行が来島しても、名探偵とその助手であろう二人はまだまったく犯人を絞り込めてないし、密室でどうやって殺害し手足を処分したのか?犯人はどこへ消えてしまったのか?まったくたどり着けてない。

しかし、副所長も殺されて、ついに関係者が一堂に会す…と思いきや、それはアバターとして仮想現実空間?!
確かに新時代の幕開けのような記念碑的作品であることは感じられた。天才の緻密な犯罪計画を天才が解き明かすミステリー。それなりに驚きはあった。

凡庸な自分のような人間は日々、これとこれを合わせるとだいたいこうなるという思考で生きている。ところが理系の天才は数学的な裏付けで計画して行動してる。かないっこない。
この本は普通の人はかないっこない内容かもしれない。とくに、IT工学というものにまったく触れてこなかった人には苦痛かもしれない。70代以上の方にとっては意味もわからないかもしれない。

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