2023年10月18日水曜日

碧野 圭「凛として弓を引く」(2021)

碧野 圭「凛として弓を引く」(2021)という本がそこにあったので読む。表紙から判断してガールミーツ弓道青春小説であろうと推測。文庫書き下ろし。
この作家の本を読むのは初めてなのだが、60代女性だとは思っても居なかった。

ヒロイン矢口楓は中学から高校へ上がるタイミングで名古屋市から東京郊外へ家族ごと引っ越し。近所の神社を散歩してて弓道に出会う。

なんと高校弓道部が舞台でない。神社の片隅の弓道場を借りてやってる中高年の弓道グループに勧誘されて弓道を始める少女が主人公。高校に入学したら硬式テニスをやるはずが、体育会系すぎて挫折。(高校に弓道部がない)

この本が、弓道初心者が出会う弓道世界をリアルに読者にも活字で見せてくれる。弓道を扱ったドラマや映画や小説も少なくないのだが、これほどに初歩の初歩から詳しく弓道とは何かを教えてくれた小説はなかった。

そんな弓道世界以外の登場キャラたちの個別の重たい事情とかも描かれてるのだが、弓道にくらべるとわずかしかない。弓道とドラマの分量のバランスがよい。読んでいて「そういうの要らない」と思う箇所がほとんどなかった。さくさくページをめくれた。

せっかく見つけた自分の居場所の弓道場が移転して無くなる?!という展開は「初森ベマーズ」的。
高校1年生ヒロインが真面目だしピュア。女子高生にしては学業や進路で悩むとか、憧れの先輩との恋といったありがち要素がほとんどない。ひたすら真面目に弓道世界を読者に伝えてくれる。

神奈川で弓道少女だった日向坂・高本彩花も段位を取るときはこんな感じだったんだろうかと想像。この本は暑苦しい青春が皆無。自分としては読んでよかったといえる。中学生以上にオススメする。

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