2023年10月28日土曜日

貴志祐介「黒い家」(1997)

貴志祐介「黒い家」(1997)を1999年角川ホラー文庫版で読む。この作家の本を読むのも初めて。

生命保険会社の京都支店で日々支払い査定とクレーム対応に追われる若槻慎二はある日、顧客の菰田から家に呼び出される。何の用かわからなかったのだが、息子和也が呼んでも来ないため、主人に言われるままに襖を開けると、そこに和也の縊死体。
菰田の態度と目つきがおかしい。自分の息子の遺体でなく、自分を観察してる…。

この菰田という不気味な男が保険金の支払いを求めて支店に毎日やってくる。本店からの決定が来ないことには支払いができないし、何より、この菰田が過去に何度も保険金を受けてる常習者。息子も菰田に殺害されたのでは?自分が呼び出されたのは、息子の死を保険会社の責任者に見せるためでは?状況が不審すぎる。

若槻が再三「捜査はどうなった?」と警察に問い合わせるのだが、さすが京都府警。何もしない公務員。のらりくらり。ぼんやりしたアリバイが確認される時点で何もできない。

菰田はサイコパスの恐れ。こいつにマークされるとか恐怖。とくに激高などしない菰田だが、応接室で切断して指のない手を噛んで血を流すなど異常。

若槻は母校の心理学教授を訪ねる。菰田は少年時代から異常。その妻も異常。やがて、支店を訪れ菰田を観察し尾行してた心理学研究室の助手が死体となって発見。若槻の自宅には執拗な無言電話。郵便物も開封された痕跡。

やがて本店は菰田への保険金500万円の支払いを決定。そのことに若槻は不満。
でもこれで菰田は支店にやって来ないだろうと安心するべきなのだが、若槻の恋人の猫が殺害される悪質な嫌がらせ。もう一刻も早く京都を離れ、菰田とこれ以上関わるな!

保険金支払いの障害となるやつらは躊躇なく殺す!というサイコパスすぎる常習的保険金略取者に逆恨みロックオンされた支払い査定担当の恐怖の体験。わりとベタなサスペンススリラー。

ラスボスが化け物並みに強すぎる。まるで「羊たちの沈黙」だし貞子。関係者(無関係者も)を次々と殺し、警戒をかいくぐって若槻の居場所に表れるとか都合いい。そこはリアリティーない。
死屍累々で怖い。京都府警はフィクションでも無能どころかむしろ邪魔で怖い。

読んでる最中、てっきり和歌山カレー事件の犯人夫婦を連想していたのだが、この小説は和歌山よりも1年早いと知って驚いた。
多額の生命保険を掛けてる人、掛けられてる人は常時監視対象にするべき。

あと、作者の貴志祐介は京大卒で生保会社勤務後に作家に転じた人。その経験をこの小説に活かしたといえるのだが、保険業は大学出たような人間がする仕事じゃないと感じた。

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