ジョン・ダニング「死の蔵書」(1992)を宮脇孝雄訳1996年ハヤカワ・ミステリ文庫版で読む。これ、以前からいつか読むべき積読リストだった。
「すべての本好きに捧げるネロ・ウルフ賞受賞作」とある。その賞が何かは知らないけど。
BOOKED TO DIE by John Dunning 1992
ジョン・ダニング(1942-2023)を読むの初めて。今年の5月に亡くなってたことを今知った。
1986年のデンヴァーが舞台。路地で古書の「掘り出し屋」中年男の撲殺死体が見つかる。
殺人課のクリフォード刑事が駆け付ける。聞き込みの結果、被害者男性ボビーは何か大きな商いの予定があったのだがダメになったらしい。その本は何か?
クリフォードは普通の刑事と違っていた。まだ36歳独身男なのに古書に異常に詳しい。古本の相場やら、初版本の特徴やら、古書取り扱いについて詳しい。被害者と取引のあった古書店同業者たちに聞き込みに行った先で、古書についての知識を披露。
驚いたのが、80年代中ごろの段階で、スティーヴン・キングの初版本は高値で取引。(そしてトマス・ハリスを褒めている。)
クリフォードには不倶戴天の天敵がいた。元詐欺師なのにランボルギーニに乗って金持ちで粗暴なジャッキー。こいつが掘り出し屋ボビー殺害犯かもしれない。ジャッキーはすぐカッとなって飼い犬も殺す。恋人バーバラにも暴力。
バーバラの身が危ない。ジャッキーをボコボコにして社会から非難され警察を辞める。
てっきり社会派刑事ドラマを見ていたつもりが、いつのまにか、刑事が古本屋を開業してしまう。飛び込みで食う事も住む家もないバイト娘ミス・プライドもやってくる。ここまでが第1部。
80年代アメリカには「セブンイレブン」があったことを知って、今さらだが驚いた。この本がアメリカ読者に向かれて書かれた当時、読者にはセブンイレブンがよく知られた街角風景だったに違いない。
あと、古書店業者格言のようなもの。「どういうわけか、野球のファンは本を読むのが好きで、フットボールのファンはビールを呑んで騒ぐのが好きなんだな。野球の本は売れる。」という箇所を読んで思わず笑ってしまった。
第2部、若くて美人の本の目利きリタにフラれた夜、店に戻ったクリフォードはバスルームでバイト少女ミス・プライドと掘り出し屋のピーターが折り重なるように頭を一発ずつ撃ち抜かれ死んでいる…のを発見。急に目の前に凄惨な場面。
元警官にすぎないクリフォードは独自にミス・プライドを殺した犯人を捜し始める…。
稀覯本をめぐる古書店業者たちの欲望の果ての殺人。元刑事の書店主が犯人を追うサスペンスドラマだけど、ページをめくる推進力があった。面白かった。名作だと感じた。ラストでちゃんとピタッとピースがはまっていく、上質のミステリーだった。
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