逢坂剛「カディスの赤い星」(1986)を講談社文庫上下巻で読む。自分、逢坂剛を手に取ったのも読むのも初めて。
国内楽器製造販売会社のPR担当事務所の経営者(いわゆる広告宣伝担当コンサル?)主人公の漆田亮(スペイン語が堪能、ハンサム)は、技術指導のためにスペインから招聘した老ギター職人ラモス氏から20年前に自宅工房を訪れた日本人ギタリストを探してほしいという依頼を受ける。この物語の舞台は1975年。
上巻はまるまる人探し探偵ハードボイルド。ライバル関係にある楽器メーカー同士の広告会社間の競争、消費者団体のクレーム処理と確執、ラモス氏の孫娘フローラ、行方知れずのフラメンコギタリストと関係者の人間模様、ライバルPRマンヒロイン理沙代との恋。
だが、下巻になるとそれはもう国際陰謀スリラーとハードボイルド。まるまる一編の映画のよう。フローラは本国スペインで反フランコ活動にのめり込む学生だった。
スペインの秘密警察、警備隊、過激派、まるでダイハードのようなテロと陰謀、仲間の裏切りな危機一髪大冒険に主人公は巻き込まれて行く。
そしてフランコ総統を暗殺する計画。それを阻止する勢力。漆田はギター製作者から頼まれただけなのに、ありとあらゆる危険に巻き込まれていく。
そして幻のギターの奪い合い。親と子の関係が暴かれる。面白くてページをぐんぐんめくっていける。ストーリーに推進力がある。
なんだこの大娯楽エンタテイメントは。まるで映画を2本見たような、どっぷり疲労感。それでいて爽快感。主人公がかっこよすぎる。
どうやらこの「カディスの赤い星」が逢坂剛の代表作で最高傑作という扱い。1986年下半期の直木賞など各賞を受賞。
著者の豊富なスペイン知識が盛り込まれてる。自分、スペインを舞台にした小説をあまり読んだことなかった。フランコ総統治世下のスペインを扱った映画やドラマは見たことなかった。
独裁者が死んでからスペインはいっきに変わった。つい50年前まで右派と左派双方がテロの応酬してたとか、秘密警察があったとか、欧州と世界から孤立していたとか、今のスペインを日本から見ていると気づいていない人も多そうだ。
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