2023年9月27日水曜日

スエトニウス「ローマ皇帝伝」

帝政ローマ五賢帝時代の歴史家スエトニウス(Gaius Suetonius Tranquillus 70?- 130?)による「ローマ皇帝伝 DE VITA CAESARUM」が岩波文庫(国原吉之助訳 1986)上下巻で出てるので読む。これが本邦初の完訳版だったらしい。

シーザーから始まって、ユリウス=クラウディウス朝の5人、四賢帝の年の4人、フラウィウス朝ドミティアヌスまで、計12人の帝政ローマ元首の事績、戦争、政治闘争を記述。世評、風刺、落書きの類まで渉猟し、皇帝の知られざる個人生活までも細大漏らさず記載した皇帝伝。

自分がこの本の存在を知ったのはアルベール・カミュが戯曲「カリギュラ」を書くために参照にしたらしいことから。

正直、歴史小説などと違って、ほぼ同時代の秘書官兼公文書官による著作。
知らないことばかりだった。教科書が教えてくれない初めて知ったローマ皇帝の人柄と知識、
  • カエサルは癲癇で気を失うことがあった。
  • カエサルは色を好み放埓であったが、貞操に関してニコメデス王と同棲していた風評も。
  • カエサルは薄毛に悩んでた。
  • アウグストゥスは家具調度品が質素だった。食事はありふれたものばかりを、いつでもどこでも、湿らせたパン、1本のきゅうり、レタスの葉、すっぱいリンゴ、ほんの少ししか食べなかった。酒はほとんど飲めなかった。
  • ティベリウスは阿諛迎合を嫌った。追従めいた言葉は躊躇なくその場で発言を遮り、叱責し訂正させた。
  • そしてありとあらゆる残虐な刑罰。性に関しても変態。ティベリウスが死んだときローマ市民は歓喜。
  • カリグラ、クラウディウス、ネロ、もれなく邪知暴虐。思い付きでありとあらゆる残虐な刑罰。「阿鼻叫喚の石段」てなんだよ。そもそも剣闘士の殺し合いなんかを楽しんでる時点でローマ市民も異常。
  • ローマ皇帝たちは剣闘士という娯楽を適切に提供できるように市民に気を使ってた。「パンと見世物」ってそうゆうことか。正しく裁判をして、市民から税金を徴収し戦争して公共事業と食料を賄って、市民に娯楽を与える。それが元首の仕事。
  • 天寿を全うして穏やかに死んだ人の方が少ない。ガルバ、オト、ウィテリウス、もれなく悲惨な死。
  • クラウディウスは63歳?ガルバは74歳?ウェスパシアヌスは69歳?中世の王たちは40代とかで死んでるのに、古代ローマは意外に長生き。
  • ヴエスビオス火山の噴火、ローマの疫病と大火があったのはティトゥス帝のとき。コロッセオが完成(80年)したのもこの皇帝のとき。
教科書では記号にすぎない人名が、この本を読んだことで初めて生きて実在した人物だと実感できた。古代ローマの通貨単位セステルティウスがなかなか覚えられない。

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