2023年9月25日月曜日

岡嶋二人「99%の誘拐」(1988)

岡嶋二人「99%の誘拐」(1988)を講談社文庫(2004)で読む。第10回吉川英治文学新人賞を受賞したとある。

昭和50年年末、末期がんで残された時間がわずかになった病床の男が、息子に向けて手記を書いている。
昭和43年、三億円事件が世を騒がせていた時期よりもちょっと前に起こった、イコマ電子社長の5歳息子が幼稚園登校する前に自宅から誘拐されるという事件が起こった。

犯人が要求してきた金額が5000万円。アメリカの親会社の業績悪化に伴い、これから国内で半導体生産工場を立ち上げようという時期に、どうしても必要だった金を身代金として支払い、夢を諦めた男の無念。

犯人は身代金を金塊に替えるように要求。新幹線の時刻など細かく指示を出し、最終的に瀬戸内海のとある地点で海中に遺棄させた。おそらくこの金塊は犯人グループによって回収されたものと思われていた。

だが、昭和62年夏。瀬戸内を潜っていたダイバーが金塊を引き揚げようとして溺死してたことが判明。これは、12年前に起きた児童誘拐事件の身代金として海中に遺棄された金塊だ!

身代金支払いとイコマ電子をカメラ会社リカードに吸収合併された生駒洋一郎の息子慎吾は25歳になり、リカードの社員となってカナダ支社で働いていた。
そして、リカード会長の孫(中2)が誘拐。身代金は10億円。全額をダイヤモンドに替え、金属容器に入れ、受け渡しを慎吾にさせる合成音声による女性の声で犯人から電話。

そして、東北道、蔵王へ、犯人からの指示のまま大追跡。
だが、この本の読者は、犯人が慎吾の作り出したコンピュータープログラムと音声であることを知っている。
そんなバカな?というストーリーのようでいて、これは今現在の技術力であながち不可能じゃなくなっている。

いったいいつどこでバレるのか?と思って読むのだが、最後までスカッと鮮やかな復讐劇。1人の死者も怪我人も出さずに、父を陥れた汚いやつらから倍返し以上の仕返し。誰もがこんな復讐をしたい。日本を壊した竹中平蔵と経団連に同じことをしたい。

2時間ぐらいであっという間に読んでしまった。見たことない展開で飽きることなく一気に読んでしまった。余計なことは語りすぎない文体が良い。これも面白かった。

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