2023年9月14日木曜日

野村胡堂「奇談クラブ」(昭和6年)

野村胡堂「奇談クラブ」を読む。友人から借りて読む。昭和6年に四条書房から刊行されたものの2018年5月河出書房新社からの復刊。全5話を収録。解説を含めると405ページ。

野村胡堂(1882 - 1963)がいつの時代の人かすら自分は知らなかった。この人が「銭形平次捕物控」の作者だということはクイズ的に知っていた。
1882年生まれなので、小川未明、野口雨情、鈴木三重吉と同じ年。金田一京助とは盛岡中学の同級生。

東京駅前にあるビルの一室。吉井合資会社の吉井明子(22)の主催する、有閑階級名士たちによる、面白くて不思議な話の数々。
奇談クラブの設定が江戸川乱歩「赤い部屋」に似てる。胡堂は乱歩よりも12才年上。
メンバーが語って聴かせる話がすべて享保年間から幕末の話。なので、ずっと時代劇を読んでる感覚。

第一話「紅唐紙」
木曽檜問屋で財を成した一家の財宝探し。古書店で10銭均一で売られていた和本を珍田博士が買い求めたことから起こった騒動。

第二話「魔の笛」
5人を祟り殺した呪いの笛。怪談ホラーのような内容。

第三話「湖心亭」
新婚の友人伊東夫妻の別荘へ向かう三国(水泳選手)は食堂車で妖艶な美女と出会うのだが、この女が伊東へ復讐するためにやってきた奇術師?!
わりと古典的な探偵スリラーのような展開。

第四話「女性の秘密」
この話が全5話の中で圧倒的に長い。読んでも読んでも終わらなくて呆れる。ほぼ時代劇映画のよう。
大正昭和の娯楽読み物の雰囲気。まあ面白いっちゃ面白いが。なんだか「仮面の忍者赤影」とか「大魔神」みたいなファンタジー要素を盛ってる。

第五話「鏨地獄」
彫物師小瀬川桂堂は江戸の美人として名高い上総屋お妙が何者かに拉致され、「来栖の化け物屋敷」へと運び込まれるのを目撃。弟珊之助、伝次といっしょに化け物屋敷に潜入。そこは碧眼紅毛の外国人とお侍、そしてオランダお鉄といった面々の住む「八幡知らず」のような屋敷だった。
自分としてはこれがいちばん面白かった。冒険譚といっていい。江戸時代の人々には古代ギリシャの裸体彫刻の価値は、異質なもの過ぎてまったくわからなかったに違いない。

正直、令和の今にこれを読む意味があるかはわからない。たぶん、子ども時代に時代劇で育った現在70代以上の人々には響く懐かしさがあるかもしれない。

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