楼蘭(昭和33年)
漢と匈奴の間に挟まれた砂漠の城邑都市国家の市民たちの悲しい末路。
楼蘭の人々は匈奴の脅威から逃れるために、紀元前77年に鄯善(ぜんぜん)をいう後身都市国家を作ってたって、ぜんぜん知らなかった。
いつの日かまたロブ湖のほとりの楼蘭に帰ろうと思ってたけど、ロブ湖も消えてしまって城郭は砂に埋もれた。
そして1900年にヘディンの探検隊が丘の上から若い女性のミイラを発見する。まさに歴史ロマン。
洪水(昭和34年)
後漢時代、索勱という匈奴討伐隊の司令官がクムダリヤの濁流にのみ込まれる話。大自然の驚異と戦って憐れな末路。大河を渡って進軍するのは今も大変。
異域の人(昭和28年)
班超の西域遠征。果てることのない匈奴との戦いの日々。
狼災記(昭和37年)
始皇帝の時代、匈奴との戦いで勇猛だった将軍・蒙恬の死が頭を離れない陸沈康。カレ族の集落に駐屯してるとき、夫を亡くした女を抱いてしまう。すると狼になってしまった。中島敦「山月記」とそっくり。
羅刹女国(昭和40年)
羅刹女の島に漂着してしまった船乗り男たち。今昔物語にあるやつ。元をたどれば大唐西域記。
僧加羅国縁起(昭和40年)
虎の父、人間の子、セイロン。これも大唐西域記からとったもの。
宦者中行説(昭和40年)
漢の文帝の時代、匈奴の王(冒頓単于)の子(老上単于)に嫁した公主に付き従った宦者中行説(中行が姓、説が名)の人生。
褒娰の笑い(昭和40年)
周の幽王の後宮に上がった褒娰(ほうじ)は王子を産み寵妃となり正妃となる。幽王は叛乱軍に備えて鎬京の王宮の城壁に烽火を灯すための台をつくったのだが、やがて褒娰の目を喜ばせるために火をともすようになる。やがて国人たちは本当の敵の襲来が来ても、兵と馬を集めなくなっていた…という故事。
幽鬼(昭和34年)
ずっと西域が舞台だったのに急に日本の戦国時代。山崎で敗れ坂本へ逃れる明智光秀。波多野秀治の怨霊を見る。
補陀落渡海記(昭和37年)
いよいよ自分の順番が来た補陀落寺の僧侶の心の内。補陀落渡海を描いた小説を初めて読んだ。
小磐梯(昭和37年)
明治21年の磐梯山大噴火を生き延びた人の証言。不気味な地鳴りと地震。そして突然の噴火。土石流。
北の駅路(昭和27年)
陸奥州駅路図という古書を作家に送りつけて来た男からの手紙。
表題作の「楼蘭」が強い印象に残った。2000年前にこんなことがあったのかもしれないってロマン。
あとは「小磐梯」も忘れられない短編かもしれない。
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