佐藤賢一「赤目 ジャックリーの乱」(1998 マガジンハウス)を読む。「鳩よ!」1997年5月号~98年1月号に掲載されたものを単行本化したもの。2001年に集英社文庫化されたときに「赤目のジャック」と改題されている。
ジャックリーの乱(1358)って言われても、英仏百年戦争中、シャルル王太子摂政時代のフランスで起こった…という以上のことを何ひとつ知らない。フランス史のお勉強のために読む。
フィレンツェの街で再会した中年の男二人。毛織業の賃労働者フレデリは芸人ジェロームと20年ぶりの再会。フレデリは息子ジャコモを紹介するのだが、「ジャックの息子」だと知らされて激しく動揺。その直後にジェロームは馬車にはねられ即死…。
1358年5月末、北フランス・ペルヌ村。フレデリ少年18歳は、赤い魔眼を持つ流れ者の老乞食坊主ジャックと、野犬に食い荒らされた兄嫁シルヴィ16歳の遺体を発見…。吐き気と嗚咽。
ポワチエの戦いでイングランド軍に大敗したフランス軍。国王ジャン2世は敵の捕虜となりフランスは無政府状態。解雇された傭兵たちは武装したまま盗賊となり治安崩壊。
フレデリの双子の兄ロベールも傭兵どもの長剣で一突きに殺されていた。フレデリの婚約者マリー14歳も輪姦され心に傷。
戦闘のプロである傭兵が強盗となって村を略奪という、日々農作業してる村人には対抗できっこない災難。この世の地獄。
村がこうなったのも僧侶がちゃんと祈らないからだ!と村人たちからつるし上げを喰らいそうになったジャック。「悪いのは領主エンゲラン・ドゥ・ベラトゥール!」
蜂起した村人は領主と幼い御曹司を惨殺。さらにジャックは美しい令嬢を犯せと村の男たちを煽る。だが、これでは傭兵たちと同じではないか?フレデリは逃げ出す。
しかし領主の淫らな奥方ブリジットにフレデリは性を弄ばれる…。
ジャックの世直し十字軍はさらに拡大。貴族の館を襲撃し殺戮、強姦、略奪。まるでソドムの市。
しかし、フレデリはジャックに疑問を持ち始める。これはジャックの私怨では?
フレデリが助けようとした貴族出身の修道女マリーの件でジャックと対立。
歴史小説を読んでたつもりが、なんか、エログロBC級バイオレンス映画を見てる気分。しかもSMまで。
佐藤賢一の著作で多くの歴史を学んだという読者の間でもこの本は不評。とくに若い女性は受け付けないらしい。世界史が好きな女子学生とか、間違ってこれを手に取らないか心配。
途中で「もう読まなくていいかな」と止めようと思ったけど、最後まで読んだ。この本を読んだところでなんらフランス史に詳しくはならない。ジャン・フロワサール「年代記」も明らかにしていないジャックを、著者の自由なイメージで娯楽読み物を創作。
0 件のコメント:
コメントを投稿