2023年9月19日火曜日

西野七瀬「0.5の男」(2023)

「0.5の男」を見る。2023年5月から6月にかけてWOWOWで放送された連続ドラマ(全5回)。
主演は松田龍平。これ、監督に沖田修一と玉澤恭平、脚本に沖田修一と牧五百音。沖田作品にはハズレがないので期待して見る。

第1話家族以外と話す」
Q太郎こと立花雅治(松田龍平)40歳は両親の実家暮らしの無職。
何が面白いのかリビングでテレビを見て笑い転げる。母(風吹ジュン)と朝から茶飲み話。腰痛持ち父(木場勝己)が朝の散歩(囲碁教室?)に出かけると部屋へ戻ってネットゲームというノーストレスな毎日で無精ひげ。

ある日から性格きつめ妹沙織(臼田あさ美)の塩谷夫妻(共働き)が立花家に加わる。ボロい日本家屋を2世帯が住む家へ建て替えリフォーム。リフォーム業者(井之脇海)はこの家が2世帯ではなく2.5世帯になることを知っている。だから雅治は「0.5」なのか。
息子雅治には事前に何も相談がなかったのだが事態を察する。狭い集合住宅から引っ越す妹夫妻の連れて来た幼い子どもたちと顔を合わせざるを得ない。
妹の長女恵麻が最近よく見る白鳥玉季だ。「キモっ。アレと一緒に住むの嫌なんですけど。」この春から中学生(小学校の友人たちとは別れて別の中学)のイラついた問題児。さっそくスマホを買ってもらってLINEデビュー。

雅治は普段は母の作るタッパー飯。唯一出かけるコンビニで買うものがじゃがりことモンスターエナジー。なぜに旅行用スーツケースを引きずってる?って思ったら、ネカフェに行ったのか。親意外とは極力顔を合わせたくない。
ゲーム実況をやって金を稼げばタワマンに引っ越せると仲間たちからそそのかされるも、現実はそう上手くいかない。

新築家族と顔を合わせないように、深夜にこっそり実家に戻る。
母曰く、息子雅治はかつてハウスメーカー営業マン青年と同じようだった。母と息子のやり取りはメモふせん。

いやこれリアル現代日本家庭に沖田監督ならではの視線で斬り込んだドラマだわ。脚本も演出もアイデアにあふれてる。
第2話昼に外へ出かける」
未就学の児童がいる住居は朝から騒々しい。この子が保育園に行きたくないとギャーギャー大騒ぎ。これは近所迷惑。これは大人の男が一番見たくないやつ。
この新居を映すカットがドラマのクオリティじゃない。映画にしても良い企画だった。

母が階段で転落して怪我。甥の蓮は保育園にいかずに部屋の壁に落書き。暴れ回る男児に沙織はさらにイライラ。家事をまったくしない雅治にもイライラ。

漣を保育園にお迎えにいかないといけないのに母はまたしても転倒。雅治がお迎えに行かざるをえないのだが、お隣さん(広岡由里子)に挨拶されたらもう家に戻らざるをえない。この男はそこまで心が病んでるのか。

姪の恵麻は友だちのいない中学で孤独だし孤立。やがて早退を繰り返しほぼ不登校。転校は子どもにこんなにも重いストレスを与える。安易に転校させるのは子どものメンタルに良くない。
しかし、そのことによって、当初は気持ち悪いと思っていた引きこもりの伯父に共感していく。

漣くんが保育園から逃亡と連絡。この子はとにかく「ごはんがべちゃべちゃするから」と言い訳して保育園に行くのを嫌がる。
体力のない雅治は土手を転がり落ちる。そこに漣。そして学校を早退した恵麻。全員不登校。
この回終盤から保育士田崎瞳(西野七瀬)登場。この家族とのファーストコンタクトが異常。西野も土手を転げ落ちてゲロを吐くw

第3話電動自転車に乗る」
恵麻は相変わらず早退。しかし家で雅治と顔を合わせるのは嫌がる。しかし、ネットでは相手が雅治とは知らずにQ太郎とゲームして会話。蓮は雅治となら幼稚園へノリノリで通園。

雅治は園長(大島蓉子)からゲームクリエイターだと思われていた。なので女職場の保育園でパソコン設定を頼まれる。ああ、人は頼られ信じられることで「働く」というきっかけとモチベーションを得ていく。

保育園へ行くことで西野七瀬保育士と話をする機会が増える。恵麻が思春期で雅治を嫌う件でアドバイスしたりする。
臼田あさ美ママの復帰した職場の雰囲気がヘンテコ。いつも熱い会議中。恵麻の中学の担任から職場に電話が来て恵麻の不登校がバレる。

ヒステリックに怒るママから逃れるために、つい雅治の部屋に入って鍵をかけて籠ってしまう。母と雅治のやりとりメモを見つけて、かつての雅治が自分と同じだったことを悟る。
人と人がちゃんとコミュニケーションとれてるほうが、むしろ普通なことじゃないなと感じる。
雅治のアドバイスによって恵麻のママパパが恵麻にやさしく話しかけるシーンはちょっと泣いた。たぶん人はほんとはみんな優しい。沖田ドラマに悪い人はいない。恵麻が人間関係で悩むクラスの女子も性悪な子はいない。コンビニの外国人店員ですらも適切に距離を持ったやさしさを感じた。

第4話アイスをおごる」
雅治はついにゲーム仲間とのオフ会にも行けるようになる。電車に乗って。もうこれはかなり回復段階にあると言えるのではないか?
オフ会で出会った旧知のゲーム仲間が隣の家の、やはり引きこもり高校生だったという奇蹟。

恵麻も割れたスマホ修理に行った電気屋が、同級生でグループの中心女子の家だと知る。この子も同じネットゲームをやっている。やっぱりQ太郎という人物が人々の中心に居る。Q太郎は恵麻に良い作用を与えてる。

え、雅治と保育士西野がつきあってるって噂になってる?いったい誰がそんな噂を?
気づけば雅治はもう挙動不審の不審者でなくなっていた。誰とでも喋れるようになっていた。
しかし、保育園で元上司(安井順平)に話しかけられたら、蓮くんを連れ帰るのも忘れ、発作を起こしたかのように部屋に逃げ帰る。ああ、職場で嫌なやつだった人は病理のような存在でしかないということだな。

「引きこもり」問題に対する沖田監督からの回答とメッセージ。優しい眼差しと適度な距離間の干渉。
原因はやはり職場と社会。余裕を失った厳しいリアル社会が優しい人を傷つける。優しい人とそうでない人のギャップに起因。
あの元上司を無理矢理に雅治と引き合わせるのは謝罪のためとはいえ、やりすぎに感じた。

このドラマ、恵麻役の白鳥玉季がかなり重要な存在だと感じた。この子はこの年代の子役としてとても重要な役を話題作で連続で演じてる。感心しかない。

最終話働く」
いくつかの事件とイベント。そしてすべて好転し収束していく。家族の希望。みんな他人をバカにしたりする悪意のない優しい善良な人ばかりだ。
腰が痛いのに往復4時間かけて買ってきた酒が家の前の道路でぶちまけられ失われても笑って済ませられるエピソードが、このドラマの真価を語ってる。
主題歌は工藤祐次郎「たのしいひとり」。毎回エンディングが良いなと感じた。
沖田修一監督の人間への優しい眼差し。今の日本はこの人の映画をもっと必要としている。
ドラマなので映画よりは台詞で説明してる。LINEを読まないと理解できないので、音声読み上げが必要かもしれない。

西野七瀬の出演シーンは思ってたより少なかった。「シャイロック」に比べたら10分の1ぐらいだったかもしれない。衣装がほぼ保育士のそれ。色気とか何もない。

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