2023年8月10日木曜日

M.W.クレイヴン「ストーンサークルの殺人」(2018)

M.W.クレイヴン「ストーンサークルの殺人」(2018)の東野さやか訳2020年ハヤカワ・ミステリ文庫を読む。表紙に英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞作だと表記がある。英米では多くの人に読まれた一冊だろうと推測。
THE PUPPET SHOW by M.W.Craven 2018
作者は英国カンブリア州出身。地元にあるストーンサークルで次々と焼死体が発見されるという本作。原題は「THE PUPPET SHOW」なので「人形劇」と訳すべきなのだが、日本の読者にイメージを伝えやすくするために「ストーンサークルの殺人」。

長期謹慎中の刑事ワシントン・ポーが隠遁生活を送る家まで国家犯罪対策庁の上司がやってきて職場復帰要請。カンブリア各地のストーンサークルで発見される焼死体にポーの名前と「5」という数字が肉体に刻まれていた。犯人は被害者に恐ろしい苦痛を与えて殺してた。

連続猟奇殺人事件で始まってるけど、その後の展開はなかなか真相に近づけない。地味展開。サスペンススリラー要素がほぼナッシング。
ポー警部が嫌われ過ぎ。指揮命令系統を守らないし、カンブリア州警察と国家犯罪対策庁で連携も上手く行ってない。
日本の警察も心根が汚いずる賢くプライド高く縄張り意識が高い人が多そうだが、英国の警察幹部ももれなくプライド高くケンカ腰。感じ悪い嫌な人が多い。

主人公ポー警部は暴力、恐喝、ひらめきと気づきで独自に行動。そのたびに上司から大目玉。意に介せず、カンの赴くままに管区の司教にまで近づく。(日本のミステリーだと大物政治家が出てくるというパターンは多いけど、宗教指導者というのはあまりない)

ポーとその女助手ティリー(統計データの使い手)が各地に聞き込みに行って捜査令状で被害者たちの関係がついに判明。ポーさん大手柄。しかし、まだまだわからないことが多い。
この事件の背景は日本ではあまり馴染みがなくてイメージしずらい。欧州における児童虐待や人身売買は、ミステリーにリアリティーを持たせられるほど深刻なのか。

復讐の鬼となった男と一匹オオカミ刑事の追いつ追われつスリラーは終盤になってやってくる。犯人独白などベタで暑苦しい場面もある。それなりに驚きの真相をいくつか繰り出してくるけど。
ドイル、クリスティー、デクスターの時代から隔世の感のデータマイニング型英国刑事ドラマ。正直、終盤は読むスピードを上げた。

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