この本は「このミステリーがすごい!2022年版海外編で2位!」というPOPで売られているのを目にしていた。では読んでみようか。主人公が高校生らしいのでライトなミステリーなんだろう。
著者ホリー・ジャクソンは英バッキンガムシャー出身でロンドン在住の作家らしい。ちなみにこの本の原題は「A Good Girl's Guide to Murder」。
リトル・キルトン・グラマースクール(日本で言ったら高校)のピップ17歳は、自分の住む町で5年前に発生した17歳少女失踪事件を調査開始。この事件は失踪少女と交際していた少年が少女を殺害し自殺した…とされている。いわゆるコールドケースもの。アガサ・クリスティーにもある英国の伝統的スタイル。
未解決事件とか冤罪事件とかを再調査する夏休み自由研究が存在するとか考えられない。でも確か「和歌山カレー事件」って最初は食中毒事件かと思われていたのをヒ素中毒だと看破したのはこの小説と同じように女子中学生だった気がする。
ヒロインのピップは父(母の再婚相手)がナイジェリア人で弟が黒人。日頃から差別を憎む正義と反抗の女子生徒。
イギリスの高校生活の日本との違いにいろいろと驚く。自由研究って英国ではより良い成績で卒業資格を得るために必要なもの?ちゃんと指導教官のような人がいて、ちゃんと調査の過程もパソコンで記録してる。
ピップは関係者にメールでアポを取ってから電話で調査してる。警察に情報公開に関する法律から資料を開示請求。地元メディア記者の決めつけ報道と差別意識に対して怒り口論した末にガチャ切り。こういう生徒は日本にはいない。
アンディ・ベル(美少女)失踪事件で警察の取り調べ後に睡眠薬を飲んでビニール袋を頭にかぶって自殺した真面目で優秀なボーイフレンド生徒(インド系)の両親と弟が地域から酷い差別と嫌がらせを受けていることに怒りの追及。スーパーのレジ打ちですら公然と嫌がらせしてくるとか、日本では考えられない。
英国は米国と同じように高校生の段階でクルマを乗り回してる。それは活動範囲が広がる。
失踪したアンディの車からアンディの血痕が発見。自殺した容疑者高校生の爪の間からアンディの血痕も発見。口論してるのを目撃されていたし、失踪時のアリバイがなく(友人にアリバイ工作を持ち掛けたり)、父親に犯行を告白するかのようなメールもあったりして、殺人の容疑者になったまま自殺したのでもう捜査も進まない。
だがアンディの死体は発見されていない。本当に死んでる?生前アンディは父と上手く行ってない。父は浮気していた。アンディ失踪直後には離婚し今は別の女性と結婚。
いろんな人々から話を聴くうちに、何人か容疑者が浮上。それに失踪したアンディは学園のマドンナであっても二面性があった。親しく付き合っていた友人たちも心の奥底では嫌な感情。容疑者の範囲がどんどん広がる。何者からか事件の調査から手を引くよう警告まで。
ドラッグの売人に尾行し接近し脅迫とか、住居不法侵入捜査とか、大学入学準備中の女子高生がしていいことじゃない。危ない。
重大な事実をつぎつぎと明らかにしていく。だが、見えない敵はピップの自宅にも侵入して脅してきたり、愛犬を拉致殺害まで…。
ずっと容疑者を絞り込んで整理しながらピップが説明してくれるので、サル殺害犯は意外ではない。終盤での真犯人との直接対決で事件の真相は語られるのだが、最後にアンディの行方は謎。そして、ピップに危機が…。
児童文学かジュブナイル読者に向けたような文体でとても平易。登場人物が多いけど、すごくしっかりわかりやすくヒロインの感情や状況を説明。
中学時代に読んだ赤川次郎の英国版を読んでる感覚。青春ミステリというジャンルだったかもしれない。
英国の高校生ってこんななの?と驚いた。友人が来たらティーを入れるの?
560Pほどある大長編だけど長く感じなかった。読むのに4日かかったけど。
自分にとって英国ミステリはクリスティとデクスターで止まってた。スマホとSNS時代の英国ミステリを初めて読んだ。これからの時代のミステリはスマホを駆使する内容になっていくのか。
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