1988年のソ連映画。時代はペレストロイカ。これからは自由に映画を作れる…と思いきや、パラジャーノフ監督は肺病に倒れるのであった。
吟遊詩人アシク・ケリブ(ユーリー・ムゴヤン)と富豪の娘マグリ・メヘル(ヴェロニカ・メトニッゼ)の恋物語を描いた映像絵巻。詩人ミハイル・レールモントフの原作。ギーヤ・バドリッゼが脚本。アゼルバイジャン語のセリフにグルジア語の字幕がつく映画?!
世界には眉毛がつながってるのがデフォの国もあるのか。ラブラブな恋人が浴びてるのはライスシャワー?!
役者たちの演技が「見てわかる」というサイレント映画時代のような雰囲気。ソ連も多民族国家なのでそういう演技が求められる。
それにしてもコーカサス、中央アジア、イラン、トルコ、そのへんの社会と風俗が日本人には今もって馴染みがなさすぎてずっと「?」が頭に浮かぶ。ほぼ別の惑星。
白い鳩、柘榴。なんだかわからないエミューみたいなでっかい鳥がいる。
心優しい吟遊詩人と領主の娘が恋したところで、娘の父は結婚を許さない。「金を持ってこい。」オヤジのテンションが異常。このへんのやりとりが映像を見てるだけで面白い。
そして吟遊詩人アシク・ケリブのギター1本渡り鳥冒険の旅。(ドゥタールみたいな民族楽器だが)
馬に乗った男(こいつ何者なんだ?)が同行を求めるのだが、徒歩で行くアシクは我関せずと川を渡る…というシーン。パラジャーノフ監督はとにかく遠い処でカメラを回す。たぶんほとんどすべてのシーンでセリフはアフレコ。
衣服を奪った男はアシクの母とマグリにアシクは死んだと嘘の報告。
裸のアシクに衣服を恵んでくれる人がいる。それはこの時代のこの地域の人々にとっては常識なの?
アンタは吟遊詩人だろ?出会った人々から求められる。楽器は隣村に流れ着いた。水に浸かった弦楽器って使えるの?
初めて出会ったばかりの老人の死。そして埋葬。このシーンが長い。アザーンみたいな詠唱になぜかマンドリンでシューベルト「アヴェマリア」が流れる。
あと、フタコブラクダってすごくでっかくて驚く。
音楽がとても民族的なのだが、ところどころエレクトリックだったり自由。
あるテーマが知ってるメロディーだったのだが思い出せず、ずっとイライラしてた。誰か言及してる人はいないか?と検索したり、思い当たるところを調べまくってようやく「サンサーンス 序奏とロンド・カプリチオーソ」冒頭のメロディーだと思い出した。
吟遊詩人って意外に冠婚葬祭で仕事があるんだな。なんでカーペットにぐるぐる巻き?
スルタンに虎の檻に入れられる…という表現。なんだかもう寺山修司の映画を見てるような感覚になってきた。時代も地域も何もかもわからない。前衛芸術映画すぎた。
恋人マグリがクルシュドベクと結婚してしまう!という危機。白馬に乗った聖人が現れアシクを故郷へ連れ戻す。
「カンディード」や「バリーリンドン」みたいな、恋する青年が世界を旅してまわって酷い目に遭って故郷に戻るみたいな。千夜一夜物語のようなおとぎ話。これは意外にコメディーなのかもしれない。
言葉はわからなくても、見てるだけでなんとなくストーリーはわかる。ダンスシーンとかインド映画を見てる感覚。今まで見たパラジャーノフ作品でいちばん娯楽性が高いかもしれない。見た後で笑顔になれた。一度見てみることをオススメする。
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