2023年8月21日月曜日

セルゲイ・パラジャーノフ「火の馬」(1964)

セルゲイ・パラジャーノフ監督による全編ウクライナ語の映画「火の馬」(1964)を見る。
ムィハーイロ・コツュブィーンシクィイの原作「忘れられた祖先の影 Тіні забутих предків 1911」を映画化したもの。
ウクライナ・カルパト山地の風土と人々の暮らし、土着の信仰とキリスト教、婚礼や葬儀、酒場での踊りなど、民族色を強く打ち出したソ連らしくない映画。

雪の降り積もった樹木もまばらな山の斜面。イヴァンコ少年が兄に呼びかけるのだが、兄はいきなり倒木の下敷きになって死亡。
葬儀の風景がなんだかカオス。これはウクライナ正教?日本人にはまったく馴染みのない民族と風俗と信仰と儀典。
さらに父親が斧で殴られ死亡。(警察はいないのかよ)
見ていてずっと時代がわからず困惑。ほぼストラヴィンスキー「春の祭典」みたいな?「ミッドサマー」のホルガ村みたいな?
新郎新婦がババア達によってなすがまま。クリスマスの風景がみたことのないやつ。ほぼなまはげみたいな仮面をつけてる。

村人が猟銃を持ってるので中世じゃない。短銃もある。粗末な家屋には窓ガラスがあるのでたぶん19世紀中ごろ?
いったいいつの時代か?それがわからないとこの地方を支配した民族がわからない。でもどうやらロシア帝国支配下の時代らしい。
イヴァンコ少年は成長すると反目する家のマリーチカと結ばれる。村を出て羊飼いの手伝いなどして働く。夜空にはやたらと輝く星。なんだこれは?超新星爆発か?というぐらい輝いてる。
マリーチカは羊を追い崖から転落。村の騒ぎを聞きつけて捜索してると川岸にマリーチカの土左衛門…。悲しみに暮れた青年はほぼ廃人。ボロボロの乞食同然。

しかし、パラーフナという年増女?(見た目で年齢の推測がつかない)と結婚。労働の日々。(西洋のおとぎ話とかに出てくる大きな鎌って牧草を刈り取るためのものだったのか。)
だがこの夫婦は満たされない。子どもを授からない。そうしてるうちに魔術師が登場。見ていていろいろと困惑。日本も明治時代ぐらいまで祈祷呪い師のたぐいはいたかもしれない。
パラーフナは魔術師に公然と色目。この時代であっても不貞は良くないものらしくて周囲が止めようとするのだが、イヴァンコは魔術師に斧で殴りかかろうとするも返り討ち。そして死亡。

そんなイヴァンコの少年時代から死まで、哀しい人生を濃厚な民族色で描いた映画。
この地方の人々の祖先はこんな感じで命を繋いできました…という映像を見せてくれる映画。
なんで邦題が「火の馬」なのか?確かに赤い馬のイメージ映像が出て来た。
この映画、音楽も独特。民謡?の歌唱も独特。どれも馴染みのないクセの強いやつ。
ダンスシーンとかカメラがやたらと水平方向に回転。そしてパラジャーノフの映像センスが独特。未知の時代の未知の世界へタイムスリップさせてくれる映画。

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