2023年7月29日土曜日

トマス・ハリス「カリ・モーラ」(2019)

トマス・ハリス「カリ・モーラ」(2019)を読む。高見浩訳2019年新潮文庫版で読む。発表と同時に日本では文庫出版?
自分、トマス・ハリス(Thomas Harris 1940-)を読むのは初めて。「羊たちの沈黙」も「ハンニバル」も読んでないけど、これが最新作なので読んでみようかと。「ハンニバル・ライジング」からすでに13年経ってるらしい。

マイアミ・ビーチにあるコロンビアの麻薬王エスコバルが所有してた邸宅に、25歳コロンビア娘がホームアローン。どうやら映画の撮影のために雇われてお留守番してるらしい。
この屋敷のどこかにエスコバルの金塊2500万ドルが残されているらしい。

パラグアイからやってきた全身無毛の変態殺人鬼ハンス・ペーター・シュナイダーとその一味。コロンビアで泥棒学校の犯罪組織を仕切るドン・エルネスト。そんな恐ろしい反社組織の悪党たちが金塊を狙ってる。反社と反社、修羅の国コロンビア、そしてフロリダ。もう「羊たちの沈黙」のような映像が想像できる。

ヒロインのカリ・モーラはバイトを掛け持ちしながら、一時的な滞在を認めらてた移民としてアメリカ社会でつつましく暮してる。いずれは獣医師になりたい。家を持ちたい。人間のせいで怪我した野鳥を救助し医療を施してるボランティアも。

このカリがとんでもない過去を持っていた。コロンビアの反政府左翼ゲリラで地獄のような少女時代を過ごしてた。なのでプロの殺し屋とも対等に渡り合える。銃器の取り扱いに慣れているし、活殺術も心得ている。一対一ではつねに優位を保つ。捕らえられたときは逃れる手段を探す。めちゃ有能。

アメリカ社会には移民と称してこんな恐ろしいスキルを持った元プロが普通に生活してる?恐ろしい。
日本も外国人を見た目に騙されて国内に入れると恐ろしいことになる。そいつは工作員としてプロかもしれない。都合の悪い隣人を瞬殺するかもしれない。平成未解決事件はそんな外国人が犯人だろうと自分は思ってる。軍事訓練を受けたやつに一般日本人がかないっこない。

全員悪人。金塊をめぐって殺し合い。そこに、銃撃事件に妻を巻き込んでしまった謹慎中の刑事、強欲な弁護士(アメリカは弁護士が食っていくのは大変らしい。常に食い扶持を探してる。)

人の命を何とも思ってない連中たちが多く登場。描写は淡々としてるけど、その死はどれもエグい。最新ハードサイコスリラーバイオレンスアクション。一見普通の美女が悪人をエグい方法で殺すジャンルの娯楽作。映画としてイメージしながら読んでいた。自分としては面白く読めた。たぶん松岡圭祐「JK」(2022)と同じジャンルの小説。

あと、エゾヒグマと共存してる北海道人もすごいが、イリエワニと共存してるフロリダ人もすごい。ワニは丸飲みできない獲物は水中で腐るまで待つらしい。

ちなみに表紙に描かれているのはコブレの慈悲の聖母像。爆弾が仕掛けらた金庫の扉に描かれている。
あと今年、遺伝子組み換えメダカの売買で逮捕者が出た「カルタヘナ法違反」が話題になったのだが、「カルタヘナ議定書」のカルタヘナがあるのはコロンビア。美しい街だけど実際に行くのは難しそう。コロンビアは反社組織が抗争してる怖い国のイメージ。

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