2023年7月12日水曜日

山田詠美「ぼくは勉強ができない」(1993)

山田詠美「ぼくは勉強ができない」(1993)を新潮文庫(平成19年33刷)で読む。

山田詠美(1959 -)を初めて読む。
1991年から92年に「新潮」などで発表された9本からなる短編集。勉強はできないのだが色男高校生時田秀美が主人公。なので一冊としてまとめて本にするつもりの連載だったのかもしれない。

ずっと独白形式なので平成の太宰治かもしれない。高校生にして恋人とセッ〇スだし、教師と、それどころか母親や祖父とも、どんなセッ〇スをするのか話題にしてたりする。
母親がアバズレなので父親がいない。女に慣れてて村上春樹作品の主人公のようにも感じる。

仲の良かった友人が自殺してしまった「時差ぼけ回復」、男子と女子、双方で相手を見透かしてる「賢者の皮むき」、大学へ行くべきか悩む「ぼくは勉強ができる」。このあたりから哲学的になっていく。秀美くんの考えが「あー、わかる」ってなっていく。
将来のため、と大人たちは言う。しかし、将来とは確実に、握り締められる宝であり得るのか。手にしたら消えて行く煙のようなものではないのか。
秀美はいろんなことに疑問を持つ。なにか行動を起こしたりもせずに、周囲の人々へ自分の疑問、考え、感想を述べるだけ。そのへんは瑞々しく清々しい。
なのに秀美くんはかっこいい。秀美の母もかっこいい。

とても平易な文体で、青春小説として中高生へのオススメ図書として名前があがることもあるのだが、それはどうかとも思う。この本は大人に向けて書かれた本。もっと読まれるべき本だと感じた。読後感も爽やか。

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