連城三紀彦「黄昏のベルリン」(1988)を読む。これは2022年になって創元推理文庫から復刊。表紙デザインが80年代ぽい。
真夏のリオ・デ・ジャネイロでの娼婦絞殺事件、ニューヨークの空港で清涼飲用水会社社員青年が東京へ出発する場面、東ベルリンから西へ決死の亡命シーン、そして東京の混血顔(まだハーフという表現は存在しない時代)日本人画家と女子大生。
サスペンス映画でよくみるような、断片的カットバック映像が多様されるような文体で、状況がぜんぜん頭に入ってこないw 困惑。
幼少から両親は空襲で死んだと聞かされ育った青木は40代で有名画家。空襲のときにできた傷跡がある。娘のような年代の学生と関係を持っている。
青木の元へ東ベルリンからの留学生が訪問。青木の出生の秘密をもたらす。あなたの母はナチ収容所で青木を産んだ。赤子は人から人へ、そして日本へ渡った。
そして青木は、元ナチSSの戦犯を追う組織によって欧州へ。パリ、リヨン、そして東西ベルリン。自身のルーツを知る旅。
(ナチ収容所の女所長「鉄釘のマルト」という人が出てくるのだが、これって「ブーヘンヴァルトの魔女」ことイルゼ・コッホがモデルか?)
だが中盤、まさかの展開に「グガァー」と意味不明な声をあげてしまった。収容所に日本人女性がいたとかありえる?と思いながら読んでいた。あまりリアリティがないなと思ってた。だが、その真相はもっとありえなかったw
父親の描いた絵を見たとして、自分の筆致と似ているからといって、この絵を描いたのは父だ!ってなるか?
終盤、仲間だと思ってた組織から驚くべきトリックをかまされるけど。これ、推理小説ではなかった。
むしろ最初から「オデッサ・ファイル」と同じジャンルの国際的陰謀を描いたスパイ小説だと思って読んでいた。
しかし、これはどう説明しても多少ネタバレになってしまうのだが、例えるなら「プリンセス・トヨトミ」や「ダ・ヴィンチ・コード」みたいな壮大なファンタジー恋愛小説だったw
世界史において超有名人物にたどりつくのだが、この人物でこのパターンの映画や小説って見たことなかった。なので新鮮だった。なぜ誰もこのアイデアを映画化しなかった?
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