2023年7月4日火曜日

筒井康隆「富豪刑事」(1978)

筒井康隆「富豪刑事」(1978)を新潮文庫版で読む。カバー表紙は真鍋博。海外ミステリーぽさを感じる。
これ、深田恭子主演でドラマ化されたと記憶してる。見てない。なので予備知識ゼロの状態で読む。4本の短編からなる一冊。

富豪刑事の囮
まもなく時効が迫った五億円事件。塗料の件から容疑者が4人に絞られた。だがここからどうすればいい?
主人公神戸大助刑事は1本8500円もする葉巻をちょっと火をつけただけで捨てるような、キャデラックを乗り回すような「富豪刑事」。(父が富豪。何もしなくてもどんどん富が増えていくw)

神戸の提案で、4人にお金を使いたくなるよう仕向ければいいのでは?となる。神戸の家でパーティー。父の美人秘書鈴江に色仕掛けをさせ、高価なプレゼントを買わせようとする。どこかに隠した五億円のところに行くはず…。

最初のエピソードとしてはまあまあの出来。それほどふざけた展開でもない。
筒井康隆の文体が、次の1行でもう人物も場所も突然変ってて、読んでいて戸惑った。

密室の富豪刑事
鋳物業の社長が社長室で焼死した事件。窓もない社長室にはとくに燃えるものもない。しかも内側から鍵がかかった状態だった。

容疑者はライバル企業の社長で事件当日に社長室を訪問していた江草。
どうしても殺害のトリックがわからない。しょうがないので大助は鋳造の会社を設立し事件現場と同じ社長室を再現。するとやはり江草がやってきて…。

こんな密室トリックもあるのか!という実行が難しいやつ。

富豪刑事のスティング
これは経営不振の会社社長が起こした偽装誘拐事件。ストーリーとしては想像の範囲を超えない。唯一他と違うのは刑事がお金をもったいないと考えないところ。大助も同僚刑事もわりとちゃんとした常識人。

ホテルの富豪刑事
関東と関西のヤクザ組長と組員がこの街で会合を行うために集結。大助は他ホテルを借りきりこのホテルにヤクザたちを一堂に宿泊させたのだが、一組の外国人客夫妻がどうしても宿泊することになり…。
これもあんまり内容がない。薄い。ミステリーとしてもツボを押さえてないように感じた。

結果、一時代どころか二時代三時代も古さ感じた。文体も構成もキャラ造形も古さを感じた。
富豪が刑事と言っても、「こち亀」中川のほうがぶっとんでる。「コンフィデンスマン」のような、でっかく稼ぐために湯水のように金を使うドラマが今は存在する。これを面白いドラマや映画にすることは難しい。

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