2023年7月6日木曜日

筒井康隆「家族八景」(1972)

筒井康隆「家族八景」(1972)を読む。平成11年新潮文庫(66刷)で読む。驚くことにもう50年前の小説だ。

テレパシー少女七瀬18歳は家政婦女中として次々と各家庭を訪問流浪。家族たちの聴きたくもない心の声を聴いて「酷いな」と感じていく話。

2番目の13人家族の家は母がだらしなく、子どもたちがみんな不潔。たまらず自分の方から暇乞い。こういう家庭って今もある社会問題。

若作り夫人のスポーツカーでの死、定年退職主人からの性的暴行、夫人の自殺、たぶん1972年当時のありとあらゆる家庭問題。心の声を七瀬による実況。ときに突き放し、ときに介入。

私大で助教授を務める心理学の先生が七瀬の父・火田精一郎を知っていた。七瀬は警戒を始める。自分の能力を知られるかもしれない。ESPテストを受けさせられそうになるのだが、愚鈍そうに受け応える。
このエピソードは今後続く七瀬三部作で重要かもしれないので記憶に留める。

他人の心の声が聴こえる美人家政婦は見た。どの家庭にも人間の醜い本性が…、という厭な短編集。ちょいホラー文芸。

0 件のコメント:

コメントを投稿