市川準の映画版は何度も見てるけど、原作は読んでなかった。自分はたぶん一冊も吉本ばななを読んでない。学生の頃、現代文で断片的に文章に触れたりはしたかもしれない。
活字だと数ページかかる説明が映画だと1カット、1セリフで示したり暗示できる。あたりまえだが原作本のほうが情報量が多い。
自分、映画ではヒロインまりあと、ようやく元妻と離婚することができた父との間に、実際の親子関係があるのかどうか判断がつかなかった。
まりあとまりあの母は、先妻側から見れば愛人と愛人の子。昭和の初めの金持ちならともかく、2つの家庭の間を行き来し、子どもが大学生になる年齢まで一緒に生活ができないってありえる?特殊すぎないか?と感じてた。年齢的に連子かと思ってた。違ってた。
最大の驚きは恭一がまりあやつぐみと同年代の大学生で、町に新たに建設中の地上げホテルの息子だったこと。つぐみたちとの出会いのきっかけが、恭一の飼ってるポメラニアンを介して。終盤の犬殺し事件の被害に遭うのも恭一の犬のほう。
映画は真田広之を使うための改変だったのか。映画は映画でよく練り込まれていた。画面で多くの情報を示してた。
まりあとつぐみが仲良くなった「お化けのポスト」というエピソードは、映画から完全にオミットされている。やってることが子どものようでいて、子どもを超えた準備と執念。
あと、原作ではつぐみの姉陽子は、映画の白島靖代のような美人ではなかったようだ。つぐみは本ばかり読んでたので勉強はできたという設定。愚鈍な姉をバカにしてた?
山本旅館は廃業が決定していて、まりあが大学の夏休みに最後の帰省するということだったのか。
映画だと恭一に度が過ぎる嫌がらせをするのは街の不良グループだった。原作では高校生たちだった。
映画とは大いに違っていた。小説は小説として面白かった。
あとがきによれば、吉本家は毎年夏を西伊豆で過ごしていたらしい。原作の舞台がほぼ映画と同じように松崎町だったのではないかと感じた。フェリーで行けてバスでも行ける漁港の街って他にある?しかしその場所は実際は土肥だったらしい。自分はまだ土肥は通りかかったことしかない。
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