2023年6月22日木曜日

能年玲奈「さかなのこ」(2022)

「のん」こと能年玲奈主演の映画「さかなのこ」(2022)を見る。制作配給は東京テアトルとジャンゴフィルム。
「さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜」を原作とする映画。これ、監督は沖田修一だったのか。沖田監督は何を見てもハズレがない。脚本は沖田監督と前田司郎

夜明け前、暗いうちから起き出して大きな水槽で飼われているフグにエサを与えるエキセントリック女。どうやら自宅から海までウエットスーツで出かけるらしい。こののんがさかなクンらしい。
漁船に同乗し船上でどんな魚がいるのかレポート。おっちょこちょいにも海中に転落。そして回想シーン。

幼女(ミー坊)が水族館でタコ水槽を閉館時刻まで飽きずに眺めてる。おっかさんが井川遥さんだ。自分の知ってる井川さんからだいぶ年取ったな。この人がビールキャンギャル時代のポスターは今もたまに田舎の居酒屋で見かけることがある。

ミー坊(のん)は教室でタコさんの絵を描いたりしてる。
この子ども(女の子なのだが)が性を超越している。おかっぱ頭女子なのだが服装が男子だ。子どもたちの会話がセンスよくて見てて面白い。
海の生き物図鑑を見ながら下校してると不審者。こいつがさかなクン(本物)。「ぎょぎょ」なんだこの映画。

海辺で巨大タコにまとわりつかれる子どもシーンが衝撃w 大人たちがそれを普通なことのように受け入れてる。
母から飼う許可を得たのに、父(三宅弘城)がその場で雑に絞めて焼いて食べる。なんだこの衝撃シーン。この映画、ヤバいな。

ミー坊が好きで書いてるさかな新聞が先生の間で大評判。この子の特殊な才能が周囲に広まっていく。近所のへんな魚おじさん(さかなクン)の家(水槽がたくさん)にも出入り。「決めた。ミー坊、おさかな博士になる!」

序盤はずっと子役シーンなのだが、この子役の無な表情がすごくリアルこどもで良い。
無職のおじさんが子どもと遊んでるというだけで周囲の目が怖い。このさかなおじさんが警察に連れていかれるとか哀しい。
で、映画中盤から高校生になった学ラン姿の能年。長髪に学生服って新鮮。能年はアラサーになっても美少女。
高校がツッパリ不良だらけ。リアル80年代田舎?
ツッパリ総長(磯村勇斗)のバイクを新聞に書く。「ジャーナリズムは暴力に屈しない」この不良たちとの噛み合わない会話をする能年のシーンも面白い。
川で釣った魚がその日の晩御飯のおかず。

ツッパリの総長が高校にカブトガニをつれてきた。え、カブトガニって瀬戸内にしかいないんじゃ?って思ってた。千葉にもいるのか。
総長といっしょに釣った魚をその場で絞めて三枚おろし。不良からバタフライナイフを借りるシーンとかまるでコント。

狂犬と呼ばれてる不良ヒヨ(柳楽優弥)が登場。こいつがかつての小学校の同級生。もうずっとクローズだしホットロード。ライバル校不良カミソリ籾(岡山天音)が相変わらずキモい。
ミー坊はさかな知識と不思議な魅力で不良たちを束ねていくw

ヒヨはツッパリを卒業して受験勉強開始。その一方でミー坊はまったく勉強ができない。三者面談で母親が「この子はお魚の絵を描いていればいいんです」
この母子は気づいたらいつのまにか二人暮らし家庭。どうしてそうなったのか説明セリフがない。あの父とは考え方が合わなかったんだろうな。

ミー坊はカブトガニの人工ふ化に成功して地元テレビ局も取材にくる。
釣りをしてるミー坊。理髪店の前でなんとなく煙草吸ってる店主(?)に釣った魚を見せたりする。なんだこのコミュ力。
気づいたら水族館の研修生として働いてる。指導する先輩とのやりとり間合いも面白い。アシカショーのシーンとかサイレントコント。なんだこの展開とテンポと演出。

今度は寿司店で働くミー坊。大将と出かけたキャバクラで幼馴染みモモコ(夏帆)と再会。あまり知られていないが、夏帆って意外とスタイルが良い。夏帆って能年玲奈と2歳しか年が離れてなかったのか。夏帆の喋り方と声質が知ってる夏帆と別人キャラで感心。夏帆は日本映画の名優。毎回感心する。

夏帆の紹介で歯科医(豊原功補)の待合室に水槽を置くアドバイザー的な仕事を受ける。この子は水族館コンサルみたないものか。
だがこの件は方向性の違い。しかし、宇野祥平の熱帯魚ショップで働くようになる。

元千葉のツッパリ柳楽は東京で彼女(島崎遥香)とフレンチ。この女が「さかな博士になりたい」というミー坊に失笑。鼻で嗤う。次のシーンではもうこの女が店を出ていく。この辺の間合いと演出が沖田修一ならでは。説明しない。

さらに子連れの夏帆が部屋に転がり込んでくる。夏帆が家事をやり三人で川の字になって寝る。
自分、映画を見始めて未だにこの主人公が男なのか女なのか判断つかなかった。やっぱり青年みたいだ。それにしても能年玲奈の胸が真っ平だ。
ミー坊はモモコ母子のために仕事がんばらなきゃ…と思った矢先に母子は部屋を出ていく。悲哀だ。
夏帆の娘のために買ったクレヨンでミー坊は独り包装紙裏にイラストを描く。
飲んだくれて居酒屋の「からふとししゃも」にクレーム。路上で目を覚ますと商店のシャッターにししゃものペンキ絵を描く。そして総長と再会。カミソリ籾・岡山天音の店に連れて行ってイカの寿司。

ミー坊はイラストを描き、ヒヨのテレビ番組に出演し魚の話をして有名になっていく。ああ、これはやっぱりさかなクン自伝だったのか。
番組の司会者がシソンヌ長谷川忍朝倉あき。朝倉あきが自分の知ってる朝倉あきよりすごく痩せている。

この映画、のん(能年玲奈)という女優の魅力が爆発してる。表情のアップのカットももれなく決まってる。すばらしい日本映画だし青春映画の傑作。社会の現実とか酷いものや見たくないものは華麗にスキップ。嫌なものは描かない理想的に描くファンタジー日本。みんなほっこり笑顔。なんか泣いた。ありがとう沖田監督。

これ、早いとこ地上波ゴールデンで放送してほしい。全国の人々と同時に感動を味わいたい。それぐらい名作。お盆とか家族で見てほしい。(横道世之介もゴールデンで放送してほしい)
かつて「あまちゃん」が好きだった人はたぶんみんな大好き。あの天野アキを思い出さずにいられない。
音楽はパスカルズ。主題歌はCHAI「夢のはなし」。

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