2023年6月23日金曜日

連城三紀彦「運命の八分休符」(1983)

連城三紀彦「運命の八分休符」(1983)という短編集が創元推理文庫から2020年に新装判として復刊したものがあるので読む。1980年から83年の間に「オール読物」他に掲載された5本からなる短編集。
連城三紀彦(1948-2013)の本を読むのは初めて。何かで短編1本ぐらいはよんだことがあるけどタイトルは覚えていない。

運命の八分休符(オール読物 1980年1月号)
人気モデルが自室で料理中に絞殺された事件。第一の容疑者はカリスマ人気デザイナーなのだが事件当日は大阪でショー。鉄壁のアリバイ。そこで第二の容疑者。人気モデル装子は被害者とライバル関係で喧嘩を目撃。アリバイがない。
装子のボディガードをした経験から探偵を頼まれたお人よし(大卒後無職)青年・軍平が、アリバイ崩しに挑む。

これはかなり時代を感じる。大阪・日生球場(90年代まではプロ野球公式戦も行われた)、後楽園球場、国電、といった言葉が出てくる。そしてトリックはプッシュホン式電話…。
しかし、犯人が完璧すぎるアリバイを用意するとかえって怪しまれるので、注意を向けさせつつ、どうしたって解決できない2分間を用意するというのが新しかったかもしれない。

邪悪な羊(オール読物 1981年3月号)
軍平の高校時代の同級生でお互いに恋心を抱いていた歯科医・祥子からの相談。自分の不注意で間違えて誘拐された女の子を犯人から取り返したい。金持ちと貧乏人、双子?出生の秘密、留学してるはずの息子、…。最後でいろんなピースがぴたっとハマって解決。

観客はただ一人(オール読物 1982年4月号)
大女優、舞台上での死。方法は?動機は?これはあんまり自分とは合わなかった。

紙の鳥は青ざめて(小説推理 1982年12月号)
軍平が散歩中にたまたま出会った自殺しようとしていた女。夫が駆け落ちしたらしい。そして白根山山中で男女の情死死体。そして意外な真相。

濡れた衣装(オール読物 1983年2月号)
銀座のクラブでの傷害事件。これも自分としてはわりとどうでもいい。

結果、この一冊の短編はどれも期待したほど驚きも感心もすることがなかった。表紙装丁のイメージでは爽やかなのだが、爽快感がない。ミステリーというより人間ドラマのほうが重点。清張のようでいて、清張のようにわかりやすくもない。だが、「紙の鳥は青ざめて」は挑戦的で驚きがあったかも。

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