2023年6月24日土曜日

連城三紀彦「青き犠牲」(1989)

連城三紀彦「青き犠牲(いけにえ)」を読む。1989年に文春文庫から出たものだが2015年に光文社文庫から復刊。「犠牲」と書いて「いけにえ」と読ませるらしい。
自分にとって連城三紀彦2冊目。短編集を読んで次に長編を選んでみた。

高名な彫刻家を父に持つ17歳の鉄男はなんだか最近おかしい。人と話すことを避けてるし、授業態度もなげやりだし、受験勉強ノイローゼなのか鬱なのか。同級生の順子は何か悩みがあるのか?と尋ねても答えてくれない。

鉄男が父の完三とも母の沙衣子(今でいうところの美魔女)とも異常な関係。母と息子の愛情の異様さは担任教師からも目撃されていた。

短編集は自分としてはそれほど響かなかった。長編ではどうか?と思って最初に手をつけたのがこれだったのだが、さらに失望した。息子も母も行動が異常すぎて、そんなわけないだろう!ありえないだろう!と悪態をつきながら読んでた。中盤までは。

息子による父殺害が発覚して、母が息子の弁護士にすこしずつ背後にあるものを告白していくうちに、なんだかだんだんすごいことになっていった。
どうせソフォクレスの「オイディプス王」をなぞったような、母と交わり父を殺した息子の悲劇を描くだけだろう…と推測しながら読んでいたのだが、あまりに予想外な展開になっていった。

前半は悪い意味で「そんな展開ありえない」「そんなふうに行動するわけない」と思っていたのだが、後半はいい意味で「ありえない!」と驚嘆せざるを得ない説得力のある真相だった。驚天動地だった。

だが、文体と構成にわかりずらさを感じた。娯楽エンタメ作品に徹してなくて格調高い文芸作品を目指してるよう。効果的にババババと電光火花が散るようなわかりやすさで読者のツボを押してくれてない。
登場人物たちの性格と心理面の解説を、くどいぐらいの分量で、わかりやすく説明してくれたらもっとよかった。ページが足りない気がした。いや、それでもこの内容はすごいんだけど。

今後も引き続き連城三紀彦を読んでいこうと思った。

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