2023年6月30日金曜日

テネシー・ウィリアムズ「欲望という名の電車」(1947)

テネシー・ウィリアムズ「欲望という名の電車 A Streetcar Named Desire」(1947)を読む。小田島雄志訳の1988年新潮文庫(平成24年30刷)で読む。
(小田島せんせいは一昔前はニュースバラエティのコメンテーターなどでテレビでよく見た人だった。もう亡くなってるのかな?と思ったが、調べてみたら92歳の現在も存命中らしい。次男の小田島恒志も英米文学者で「欲望という名の電車」の邦訳本を出してる。)

テネシー・ウィリアムズ(Tennessee Williams 1911-1983)を読むのは初めて。オビには「アメリカ文学史、演劇史に燦然と輝く、ピューリッツァー賞受賞作。」とある。調べてみたら、ピューリッツァー賞には文学賞もあるらしい。

この作品はブロードウェー初演から話題作。エリア・カザンの映画(ヴィヴィアン・リー、キム・ハンター、マーロン・ブランド、カール・マルデンほかというキャスト)で有名。日本でも上演の機会の多い人気作。
だが自分がこの作品を知った最初はアンドレ・プレヴィン作曲によるオペラだった。
今回、BOで110円で文庫本が売られていたので読んでみようかと連れ帰った。

ブランチ・デュボアという女がニューオーリンズ・フレンチ・クォーターの妹夫妻の狭くてボロい安アパートへ転がり込んでくる。

元は裕福な名家の屋敷ベルリーヴに住んでいたのだが、妹が結婚し出て行った後、家族も親戚も次々と亡くなり、葬儀のたびにお金を出費し、抵当に入っていた屋敷を失い、安月給の教師の仕事にも疲れ果て、流浪の末に路面電車で妹ステラの元へたどりついた。

ステラは育ちがいいので上品だが、夫のスタンリー・コワルスキーは教養も品もない粗暴な男。友人たちとボーリングやポーカー。妻ステラには暴力を振るい、姉ブランチはヒステリックに怯える。「あの男はきちがいにちがいない」

お金のない女の悲哀。だんだんと明かされるブランチのこれまでの過去。教師をしていた街にいられなくなった理由をスタンリーとミッチに知られてしまう。
虚栄心と虚言のブランチを追い詰めていくスタンリー。なんとか正常を保っていたブランチの精神の崩壊。読んでるだけでいたたまれない。
これはそのまま現代日本の女性そのもの。没落し漂流する悲しみ。女性に限ったことじゃない。ブランチには同情。

今回、わりと1ページごとに、動作とセリフのタイミングを考えながらしっかり慎重に読み進めた。演じる役者をイメージしながら読んだ。英米文学らしく会話がおしゃれだしユーモアも感じる。
作者は音楽を詳しく指定してる。音量とタイミングも指定してる。しかし、それがどんな曲なのかよくわからない。

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