2023年5月27日土曜日

江戸川乱歩「人間椅子」(大正14年)

江戸川乱歩「人間椅子」の春陽文庫(2001年新装28刷)がそこに110円で売られていたので購入。
この春陽文庫版は表題作他9本の短編を収録。すでに読んだことあるものが多く重複。だが、春陽文庫版も持っていたいと考え購入。自分、乱歩の最高傑作は何か?と問われたのなら、「人間椅子」と答える。

人間椅子、お勢登場、双生児、夢遊病者の死、灰神楽、木馬は回る、人でなしの恋、は最近も読んだばかりで他で感想も書いたので、今回は「人間椅子」以外はぱらぱらと読むだけにして、未読だった短編3作について。

人間椅子(苦楽 大正14年9月号)
外務省書記官を夫に持つ美しい閨秀作家である佳子。毎日のように未知の崇拝者読者から手紙が届く。その中に原稿を送りつけてくるやつもいる。この原稿に書いてある恐ろしい告白に目を通した佳子の、じっとりと冷や汗がふきだすような恐怖。そしてあっけにとられる意外なラスト。

やっぱり名作。江戸川乱歩を最初に読むなら「人間椅子」か「屋根裏の散歩者」のどちらかをオススメしたい。

毒草(探偵文芸 大正15年1月号)わずか9ページの短編
小川が流れ雑草が生い茂る近所の野原へ友人と散歩に行った折、ついなにげなく友人にそこに生えている野草が、昔に産婆が堕胎の妙薬として用いた毒草であるという話を語って聴かせ、産児制限についてや裏の貧乏長屋の子だくさんぶりについてひとしきり話をした。
友人と別れたら、すぐ近くにある貧乏長屋の6人の子だくさん郵便配達夫のお腹の大きい40妻がすぐ傍で立ち聞きしていたことを知る。
夜に気になって野草の生えていた辺りを探ってみたら、1本折られていた。

数日経ってその奥さんと細い路地で出会ってしまった。恥ずかしそうにニヤニヤ笑ってる。そのお腹を見たらペチャンコになっていた。
さらに近所でも郵便配達夫以外でお産が流れた夫人が2人いるという…。やはり野原に行ってみたら、どの茎も折られていた…。

どうってことない短編かもしれないが、時代の雰囲気を表してるかもしれない。そういう知識をむやみやたらにひけらかしてはいけないという話かもしれない。
自分、いつもBSプレミアム江戸川乱歩短編集でドラマに出来そうなものはないか?と探してるのだが、この短編は無理かもしれん。

指輪(新青年 大正14年7月号)わずか5ページの短編
再会した男ふたりの会話。以前に列車内での指輪盗難事件の嫌疑をかけられたとき、どうやって上手く逃れたのか?これは超短編なのでどうってこともない。それほど価値を見出せない。

幽霊(新青年 大正14年5月号)21ページ短編
一代で大身代を築いた平田氏は辻堂という老人に強く恨まれつけ狙われていた。常に用心していたのだが、その辻堂が死んだという知らせ。辻堂の家を探ってみたり、戸籍を調べたりしたけど、辻堂の死は間違いないようだ。
だが、辻堂から脅迫の手紙。「自分は死んだがこれからは怨霊となってお前をとり殺す」

それからは出かけていくあちこちで辻堂の顔を見てノイローゼ。人のススメで転地療法。しかしそこでも辻堂を目撃。これは一体…と思ってたら、話の面白い青年と出会って…。

これ、まさしくその青年を自分は満島ひかりで脳内再生してた。昔のお役所の戸籍謄本の扱い方という、やや時代を感じる短編ではあるが、ドラマ化は可能。

この春陽文庫版で未読だった短編は以上3本だったのだが、今回「灰神楽」も読み返してみて映像化できそうだと感じた。キャッチボールをしていた弟が連れて来た男を明智探偵に置き換えることが可能。

0 件のコメント:

コメントを投稿